にゃ、にゃろう…、言いやがったな。


挑発してくる島津に、「吠え面かくなよ」鼻を鳴らして相手にパス。

それなりの飛距離に、まずまずだとご感想を寄越して下さった。

まったくもって小生意気な後輩だこと。

俺が本気になったらこんなもんじゃねえぞ。


上手い類には入らないけど、下手な類にだって入らないんだからな!
 

ムキになった俺は買った代物を置くために、一旦ご神木下へ。


荷物を置いて踵返すと、地面を蹴ってサッカーボールを奪うために駆け出した。

逃げる島津を追って、追って、追いかけて、ボールを奪って奪われて。

走る妨害する、パスをする返す、神社を囲っている壁にシュートする。


嗚呼、久々の快感に俺は笑顔を零した。
一人よりは二人だな、やっぱ楽しい。

吹く風に乗って走る俺と島津は壁にシュートを決めてハイタッチ。

青空の下では俺達の笑声が満ちた。
 

「なんだよ、やっぱまずまずの腕じゃんか。健」

「うるせぇ。お前も変わんないって島津」
 

皮肉り合ってまた一つ笑声、久々に友達と遊んだって感じがするのは島津が俺と同い年だからだろう。

肉体的にも精神年齢的にも同い年の島津と、こうしているだけで心が躍る。
 

時間も忘れて島津とサッカーをしていると、「あ。此処にいたんだ」神社に響く第三者の声。
 

顔を上げれば、学ランを着た男子が島津に駆けて来た。どうやら島津と知り合いらしい。


いかにもガリ勉オーラを漂わせているそいつは、とろそうな駆け足でこっちにやって来る。

「よっ。天音(あまね)」

片手を挙げて挨拶する島津は塾は終わったのかと、相手に質問。

うんっと頷くそいつは、俺の存在に気付いて「お友達?」首を傾げた。

「健ってんだ」軽く俺を紹介し、島津はそいつのことも紹介してくれた。
 

「こいつ、永戸天音(ながと あまね)。幼稚園からの付き合いなんだ」

「永戸か。宜しくな」