寝耳に水だ。俺はまさかっと目を削いだ。
両親はデキの良い兄貴に期待していたし、兄貴もそれに応えていた。
とても兄貴を可愛がっていたんだ。
俺も可愛がられてはいたと思うけど、なにぶんデキが悪かったものだから。
両親が喧嘩している間は、よく成績の劣等に八つ当たり買ってたしな。
「なんでこんな点数しか取れないんだ!」って。
叱られる度、兄貴にまた言われてやんのってからかわれて…、で、親の虫の居所が悪かったんだと慰めてもらっていたけど。
離婚が確定したら、絶対どっちが兄貴を引き取るかで揉めると思っていたのに。
「こんなことを言うのもなんだけど、お前の両親、最初こそ…、お前が行方不明になったこと自体を怒っていたみたいなんだ。
家出だと決め付けて、心配どころか怒り心頭していたみたいで」
想像できるなぁ。
両親、自分達のことで一杯一杯だったみたいだから、何かと子供に八つ当たりしていたし。
おかげさまで主に俺が貧乏くじを引いていたわけだし。
ああ、たまに兄貴も怒りをぶつけられたりしてたけど、兄貴は受け流すのが上手いからな。
空笑いする俺に、「その親の態度に聡さんがブチ切れたんだ」俺も傍で見ていたよ、遠藤が小さく呟いて教えてくれる。
そのブチ切れる光景を目の当たりにしたのは、事情聴取の時。
俺の行動を情報収集しようと、より親密な人間が学校の会議室に集められ事情聴取をしたらしい。
遠藤や俺と仲の良い友達、担任、家族が出席したわけだけど、両親があんまりにも俺に憤った態度を見せているもんだから、兄貴がブチ切れたとか。