高校に進学した俺は、持ち前の性格で友達を沢山作る事ができた。
色んなことを経験しようと仮入部しまくったけど、サッカー部にだけは仮入部さえしなかった。
サッカーをするだけで自分の愚行を思い出すから。
陸上部に入った俺はそれなりに楽しい生活を送る事ができた。
友達も気さくで良い奴らバッカだったし。
でも親友といえる友達まではできなかった。
好きなアーティストが一致しても、お前ほどのファンじゃなかったから話が噛み合わないことも多々。
その度に親友が恋しくなった。
年月が経てば経つほど、坂本は時の人、故人扱いされるようになった。
だけど俺は信じたくなかった。坂本はどっかで生きているって信じていたかった。
だってまだ仲直りもしてないんだから。
諦め悪くお前を捜していた。帰りを待っていた。
気付けば、そんなことをしている同級生は俺と秋本だけだった。
皆、新しい環境、生活に慣れ親しんで前を歩き始めている。
俺達もそうしなきゃいけないことは分かっていたけど、でも坂本って親友を過去にはしたくなかった。どうしても。
だから成人式を迎えた日、坂本が来るんじゃないかと期待した俺がいた。
結婚式を控えた日、坂本の席も用意した俺がいた。
何気ない休日、未だお前を捜し待つ俺がいた。
なにより俺はお前の親友。俺が待ってなきゃ、お前拗ねるって思ったんだ。
あいつが戻って来たらなんて言おう。
ああそうだ、まずこう言おう。
あの時、郵便受けに入っていた限定版のCDを持って、申し訳なさそうにしているお前に、
「これ、返すよ坂本。お前の大事なものだろ? もう俺、怒ってないから。俺も言い過ぎたよ…、ごめんな。また…、さっ…かー…しような」
遠藤の伝い落ちる感情の雫がCDケースに落ちていく。
涙を噛み締めて項垂れるアラサーは、「ごめん」俺に15年分の謝罪をした。
自然と流れる涙の雫をそのままに、俺は唇を震わせながら親友の両肩に手を置いた。
弾かれたように視線を合わせてくる親友に、「ごめんは」俺だよ、上擦った声を漏らす。