学期が終わり、俺達は卒業の日を迎えた。
仲間との別れとその寂しさで涙する季節を迎えたっていうのに、坂本は見つからないまま。卒業証書を受け取ったのはお前じゃなく、お前のご両親だった。
写真を胸に抱えてそれを受け取る姿に誰もが涙したと思う。
俺も涙腺にきていた。
あれ、なんでお前じゃなくてご両親が受け取ってるんだろう。
疑問に思いながら、俺はひたすら、その光景を見つめていた。
教室に戻ってお前のご両親が俺等に挨拶する姿といったら、いったら…。
『ごめんね。ごめんね』お前のお母さんはそう言いながら、写真を抱き締めていた。
なんでお前のお母さんが写真に謝っているか、それは家庭事情から離婚危機にまで発展し、とても息子に辛い思いをさせてしまったから。
そのことでとても思い悩んでいたとお前の兄ちゃんに聞いたから、無性に俺は泣きたくなった。
あの日、お前が上の空になって凡ミスを繰り返していたのは、家庭のことで思い悩んでいたに違いない。
なのに俺は、それにさえ気付けず、親友を責め立ててしまった。暴言を吐いてしまったんだ。
無事に卒業式を終えた俺は写真撮影もそこそこに最後まで学校に残った。
で、誰もいない教室に戻って記憶のページを捲った。
あの時、俺が親友の様子に気付いていれば、暴言なんて吐かなければ、激怒なんかしなければ、坂本は一緒に卒業の日を迎えていたかもしれない。
なあ坂本、お前、卒業迎えなくて良かったのかよ。
俺、卒業しちまったぞ。
高校生になっちまうんだぞ。
なあ、坂本…、なあ!
『嘘だから…、消えろなんて嘘だから…、謝るから…っ、だからっ、だからっ!』
静まり返った教室に叫んだって結果は一緒、お前が戻ってくるわけもない。