だってそこにはクシャクシャな顔で俺を見据えている遠藤がいたから。

泣き出す一歩前の顔を作っている遠藤は、自分が今年で30だってことも忘れて、途方に暮れたような幼い顔を作る。

そのCDを下ろして、洟を啜るリーマンは上擦った声を出した。
 




「15年前のあの日。お前に激怒したあの日の金曜、俺は郵便受けにこれを見つけて怒りを思い出していた」





何気ない気持ちで郵便受けを開けたら、ヘンチクリンなビニールの塊が入っててさ。

なんだろうって中身を開いたら、俺とお前が好きなアーティストの限定版CDで…、すぐに犯人が分かった俺は、

『あいつかよ』

こんなんで怒りを消そうとしてるのかって、激怒も激怒。

自室に戻ってぞんざいにそれを机に投げて放置した。

当時の俺はグランドの主導権が一週間、隣クラスに渡っちまったことに怒れていたんだ。
 

あいつをサッカーになんて誘わなきゃ良かった。

その夜はそればっかが頭に残っていた。



翌日も怒りの芯は残っていて、友達と遊びながらも、ふと口に出す愚痴はお前のことバッカ。

友達が苦笑するくらい、愚痴を零していたと思う。


でも日曜に日が変わると、ちょっち怒り過ぎたかもしれないと片隅で気持ちが変化し始めた。

まだ怒りの方が上回っていたけど、まあ、真摯に謝るなら許さないこともないかもしれない、なんて上から目線で物事を見ていた。


そして月曜、学校に登校した俺は坂本の出方で態度を変えてやろうと小生意気なことを思っていた。


坂本が詫びる素振りを見せるなら、少しだけ許す素振りを見せてやってもいい。ほんの少しだけな。

公園のグランドはあいつのせいで持っていかれちまったから、まだ許してやらないけど。
 

なんて思っていた朝、お前は時間になっても登校してこなかった。

おい、まさか俺が怖くて休んだんじゃないだろうな?

自分が悪いくせに休んで逃げた?

だったら話は変わってくる。
ぜってぇ許してやんねぇ。

気持ちをまた煮やしていた朝のSHR、担任の山口が沈鬱な面持ちで言った。