不思議と冷静な気持ちで眺めることの出来た俺は、今頃皆、どうしてるんだろうと思いに耽った。

アラサーの遠藤、秋本には出会えたけど、他の皆は今、どこで、何をしているのか。15年後の姿を見てみたい気がする。

いつまで此処にいられるか、分かんないけどさ。
 

「なあ坂本、お前にちょっと見せたいものがあるんだ」


明るい声が飛んできたから、俺はアルバムをケースに仕舞って元の位置に戻した。

「見せたいもの?」

興味を注がれてベッドに上がる。

遠藤は窓際に置いているCD棚から、一枚のCDを取り出して俺に差し出してきた。


俺は目を削ぐ。
それはあの日、遠藤の家の郵便受けに投函した限定版のCD。


俺が小遣いを溜めて買ったヤツだったんだけど、遠藤を怒らせたから詫びの品に贈ったんだ。
 

若干動揺している俺は鼻の頭を掻く俺を余所に、「これお前だろ?」郵便受けに入れた、お前だろ、遠藤が質問してくる。


そういや宛て先も何も書いてなかったよな。

ただビニール袋に包んで、ポイっと投函したっけ。

今の遠藤になら言えると思ったから、「そうだよ」と頷き、明るく振舞った。
 

「お前にやろうと思ってさ。でもどう、渡せばいいか分からなかったから郵便受けに入れたんだけど…、あん時、超お前を怒らせちまったしな。
いやぁ、マジないよな。凡ミスしまくるわ、オウンゴールしちまうわ、馬鹿ばっかするわ」


……、ごめんな遠藤。

もうお前にとっちゃ昔かもしれないけど、俺、どうしてもお前と仲直りしたくてさ。

ははっ、思い出しても、許してもらえないことをしちまったって自覚はあるんだけどさ。

ああ、それでもお前、今の俺には優しくしてくれてるよな。
そういうところが大人だよなぁ。


誤魔化し笑いを浮かべていた俺だけど、相手の顔を見た瞬間、度肝を抜いた。