その言葉、そっくりそのままお前に返すんだけど。
お前もS級のファンだったじゃん。
一緒にCD買ってた仲だったしな。
「遠藤と割り勘してCD買ったこともあったなぁ。で、そのCDをテープに移して聴くってのがお約束だった。
ははっ、どっちがCDを持つかでジャンケンで決めるんだけど、いっつも俺、負けてたんだよな。たまーに勝つと、お前異常なほど悔しがってたっけ」
「……、お前はいっつも最初はグーで、お次がチョキだったからな」
「でも気付いてたぞ。お前、同情して俺に負けてくれてたって。お前、なんだかんだで優しかったからな。三回に一回の割合で、負けてくれてたな」
この瞬間の遠藤の表情に気付かない俺は、ふと顔を上げて寝室をぐるり。
ミニデスクに目が留まる。
歌詞カード置き、ベッドから下りた俺は散らかっているデスクを覗き込んだ。
物で溢れ返っているデスク上、小さな本立ても付いてる。
本立てに目を向けた俺は首を傾げた。
置いてあるのは卒業アルバムのようだけど…、小中学校のアルバムしかない。
高校の分はないのか?
「なあ遠藤。高校の卒業アルバムは?」質問に、「実家にある」平坦な声が飛んできた。
そっか、高校のお前、見てみたかったんだけど。
でもなんで高校の分は実家に置いてるんだ?
疑念に思いながら、俺は勝手に中学のアルバムを手に掴んだ。
で、中身を開く。
止める声がなかったから、見ても良いってことだろう。
ぱらっとページを捲って中身を拝見。そこには俺の知る同級生達が映っていた。
ページを捲ってもめくっても、俺の知る面子。
直接知らなくても、間接的に知ってる奴・見たことある奴が俺の記憶を擽る。
俺は自分のクラスのページを開いた。
集合写真と個人写真が載っている。
俺は目を細めた。
個人写真は春先にすぐ撮ったから、俺の分も載っているけど、集合写真は卒業直前に撮った写真なんだろう。
そこに俺はいなかった。
いやいるっちゃいるけど、右上に丸枠で映ってる。ある意味目立つ位置にいるな。
しょうがないよな…、俺、失踪しちまってるんだから。