「社会人になってもスポーツが好きなところ、お前らしいよ。実際に今も体動かしてんの?」
 

すると遠藤は生返事、「ゲームや観戦はよくするけどな」肩を竦めてくる。

そうなのか。
やっぱ社会人になると、体を動かす時間も減っちまうのか。

大人ってそういうもんなのか。
 

「なんか寂しいな。体動かせないって」
 
「……、いや、そうでもねぇよ。俺、もう滅多な事じゃ体を動かすこともしなくなったし。それが慣れちまった」
 

マジかよ。体を動かすこと大好き少年が、そんなことを言っちまう?

どっか決まり悪そうに頭部を掻いている遠藤を見つめて、「あ。」もしかして…、俺はキャツをまじまじと見つめる。


「アラサー遠藤、体が老いた? もう体、ついていかない?」
 
「てめぇ…、俺はまだ29だっつーの。ジジイ扱いしてんじゃねえぞ」
 

口元を痙攣させるリーマンが握り拳を作った。

「おっと口が滑った」

俺は小生意気に舌を出す。
よって、遠藤が俺の頭を鷲掴み。

そのままクラッシュしてこようとするもんだから、俺はギブギブと白旗を振った。


「お前が老いたことを気にしてるのは謝るって。大丈夫、アラサーはジジイじゃっ、アイデデデデッ! 子供を苛めるなって!」

「うるせぇアラサー。お前、見た目子供してんじゃねえぞ。あーん?」

「お、俺は心身15だってーの! こんのバツイチ!」


「コ・ノ・ヤ・ロ・ウ、言いやがったな?」


俺は相手の腕で首を締められた。

体格と力は歴然、勿論負けるのは俺、すぐにギブアップした。


解放された性懲りもなく俺はボソリと「大人げねぇっ」悪態を漏らす。


「んー?」なんか言ったか? 完全に相手の耳には届いているようだ。

向けてくる笑みに脅しが含まれている。

なんでもないですと軽く愛想笑いを浮かべる俺は、話題を逸らすように「このゲームしてみたいな」とテーブルに戻したゲームに目を落とす。


秋本の家で家事ばっかしてたから、こういった遊びにも不足している。

2011年は面白不安な世界ではあるけど、秋本の言うとおり俺には窮屈な世界かもしれないな。