じゃあこの少年は一体なんだ。
幼さを残す記憶の少年と一致する、目前の少年は一体。
同姓同名のこの少年は一体…。
「あの、お姉さん。どっかで俺と会ったことある?」
先に話を切り出してきたのは少年の方。
困惑している少年は何処かで見た顔なんだよなぁとぼやき、秋本の顔を熟視。
「あいつに似てるんだよな」
独り言を零す少年は、周囲をキョロキョロ見渡し、此処はどこだろうと眉根を下げた。
腹の虫を鳴かせたものだから、彼は腹減ったと小さく溜息。空いた手で鼻の頭を掻く。
その仕草は“彼”の癖だった。
分からない、少年が何者なのかは分からない。
だけどひとつ分かる。
非現実だとか、そんなことはどうでもいい。
幽霊なのかもしれない。なんでもいい。
信じられないけれど、信じるしかないではないか。
ここまで酷似しているのだから。
秋本は振り絞るように声を出して、確認の意味を込めて質問を飛ばす。
「君、秋本桃香って知ってる?」
すると少年、「あいつと知り合いなの?」一点の光を見出せたような、安堵したような表情を浮かべた。
「秋本桃香は俺のクラスメートだよ。お姉さん、あいつのいとこ? すっごく似てるけど」