夜の邸が寝静まったころ、朔夜はひとり、庭に立っていた。 雲の切れ間から、細い月が覗いている。昼間、綾の指に触れた掌には、その温もりがまだ残っているような気がした。 あの勾玉。少し困ったように笑う横顔。喉の奥に押し込めた、たくさんの言葉。 長い年月、ただそれだけを頼りに歩いてきた。 朔夜は月を仰ぎ、誰にも聞こえぬ声で、静かに呟いた。 「やっとだ……十年。ようやく、見つけた」