「あなたに、あんなふうに叱られたのは、初めてです」
「叱ってなどおりません」
「叱られました。とても、まっすぐに」
綾は、はっとして口を押さえた。言い過ぎたのかもしれない。けれど、朔夜は、静かに笑っていた。
「嬉しかったのです。あなたが、ご自分の意思で私に『いやだ』と言ってくださった。昔の私はあなたが何も言わず耐えている姿ばかり見ておりましたから」
「嫌いになりましたか。こんな、強情な女は」
「いいえ」
朔夜は即座に首を振った。それから少し視線を逸らし耳の端を赤くした。
「ますます、お慕いしております」
綾は、その場から逃げ出したくなるのを必死にこらえた。


