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「お疲れ様です! 大阪支社から参りました」
新千歳空港から電車に乗って、札幌駅に降り立った。そこから徒歩圏内という好立地にあるポラリス食品札幌支社には二十名ほどの社員が在籍しているらしい。
オフィスに入ると、早速光莉さんが元気よく挨拶をする。私もつられて「お疲れ様です」と礼をした。
「こんにちは〜夏木さん、久しぶり」
「こんにちは、大神支社長。今日は新人ちゃんも連れてきました」
「羽賀さんだよね。初めまして。札幌支社長の大神です」
五十代ぐらいの人の良さそうなおじさん——大神支社長が私に挨拶をしてくれた。本来なら自分から先に挨拶をしなければならないのにと、慌てて挨拶をする。
「は、初めまして。大阪営業部第一課の羽賀琴音です。今日はたくさん学ばせていただきます。よろしくお願いします」
「緊張しなくていいよー。大阪に比べて札幌は少人数でアットホームだから」
ワハハ、と大口を開ける大神支社長。私の挨拶がぎこちなかったからか、「フレッシュでいいねえ」と笑っていた。
挨拶をするだけだが、神経を使う。子どもの頃から人見知りっ子だった私は、初めまして、の挨拶をするのが苦手だ。だけど、光莉さんだけは初対面の時も全然緊張しなかったことを思い出す。
『初めまして、羽賀琴音です。よろしくお願いします』
『夏木光莉です! わー本当に女子だ! 我が営業部第一課に女子が来てくれたよ!』
『夏木、お前は女子じゃないのか?』
『うるさいです係長。後輩女子がどれだけ貴重か分からないんですか?』
『はいはい。優しく可愛がってやれよ』
『失敬な! 私はいつだって優しく清らかな先輩ですって』
光莉さんと係長が最初にそんなやりとりをしているのを見て、私は思わず噴き出してしまった。
大神支社長に温かく迎えられた後、光莉さんはせっせと他のメンバーにも挨拶をしていき、そのたびに私を紹介してくれた。私も、光莉さんにおんぶに抱っこではいけないと思い、積極的に自分から挨拶をした。そのうち、緊張が解れていって、自分らしい振る舞いができたと思う。
「琴音、この人が最後。私の同期の宮沢真帆。同期のみんなは、みやっちとか、まほまほとか呼んでる。営業成績もすごいし、有名大学卒業してて、めっちゃ賢いんやで」
最後に紹介してくれた光莉さんの同期だという宮沢真帆さんは、長身でとてもスタイルが良い美人だった。顔のどのパーツもすっきと整っていて、見るからにエリート社員という感じだ。
どちらかといえば背が低い光莉さんと並ぶと、漫才コンビのようにも見えるが、どちらも成績優秀な営業社員。きっと仲良しコンビなのだろう。
解れてきていた心がまた少し、固くなってしまう。
だけど、宮沢さんはにっこりと女神のような微笑みを浮かべて、私を見つめた。
「こんにちは、宮沢真帆です。めっちゃ賢いわけではないけどね。去年まで大阪支社にいました。光莉とは一緒に大阪の営業部で頑張ってましたー。この子、いろいろとはちゃめちゃなところあるけど、琴音ちゃん、面倒見てくれてありがとう」
「誰が面倒見てくれて、やねん。私が琴音の教育係やねんけど?」
「いやいや、誰がどう見ても琴音ちゃんのほうがしっかりしてそうじゃん」
「いやあ、まあ、それは間違いないわー」
ハハハッ、と光莉さんが弾ける笑顔を見せる。光莉さんが今まで私に見せてきた中で、一番まぶしくて尊い笑顔だった。思わず目を眇めてしまう。
「ああ、ごめん。うちらのノリ、鬱陶しいよな」
「い、いえ、そうじゃなくて!」
無意識のうちに顔を顰めてしまっていたようで、慌てて手を横に振る。
「お二人が、すごく仲が良いんだなぁと感じて、なんか……いいですね」
正直私は、宮沢さんが羨ましかった。
光莉さんにこんなふうに喜ばせることのできる彼女に、嫉妬してしまったのは事実だ。だけど、この場にはそぐわない感情を撒き散らすわけにはいかず、貼り付けた笑みで答えた。
「へへ、そお? 普段はライバルやけどね?」
「そうそう。光莉には敵わんのよ。札幌に異動して良かったって思ったわ」
「ちょ、それはさすがに寂しいわ! ええ……悲しいー」
悲しい、と言いながらも、やっぱり光莉さんは笑っていて、でもほんの少し切なそうに眉尻を下げたのを、私は見逃さなかった。
「お疲れ様です! 大阪支社から参りました」
新千歳空港から電車に乗って、札幌駅に降り立った。そこから徒歩圏内という好立地にあるポラリス食品札幌支社には二十名ほどの社員が在籍しているらしい。
オフィスに入ると、早速光莉さんが元気よく挨拶をする。私もつられて「お疲れ様です」と礼をした。
「こんにちは〜夏木さん、久しぶり」
「こんにちは、大神支社長。今日は新人ちゃんも連れてきました」
「羽賀さんだよね。初めまして。札幌支社長の大神です」
五十代ぐらいの人の良さそうなおじさん——大神支社長が私に挨拶をしてくれた。本来なら自分から先に挨拶をしなければならないのにと、慌てて挨拶をする。
「は、初めまして。大阪営業部第一課の羽賀琴音です。今日はたくさん学ばせていただきます。よろしくお願いします」
「緊張しなくていいよー。大阪に比べて札幌は少人数でアットホームだから」
ワハハ、と大口を開ける大神支社長。私の挨拶がぎこちなかったからか、「フレッシュでいいねえ」と笑っていた。
挨拶をするだけだが、神経を使う。子どもの頃から人見知りっ子だった私は、初めまして、の挨拶をするのが苦手だ。だけど、光莉さんだけは初対面の時も全然緊張しなかったことを思い出す。
『初めまして、羽賀琴音です。よろしくお願いします』
『夏木光莉です! わー本当に女子だ! 我が営業部第一課に女子が来てくれたよ!』
『夏木、お前は女子じゃないのか?』
『うるさいです係長。後輩女子がどれだけ貴重か分からないんですか?』
『はいはい。優しく可愛がってやれよ』
『失敬な! 私はいつだって優しく清らかな先輩ですって』
光莉さんと係長が最初にそんなやりとりをしているのを見て、私は思わず噴き出してしまった。
大神支社長に温かく迎えられた後、光莉さんはせっせと他のメンバーにも挨拶をしていき、そのたびに私を紹介してくれた。私も、光莉さんにおんぶに抱っこではいけないと思い、積極的に自分から挨拶をした。そのうち、緊張が解れていって、自分らしい振る舞いができたと思う。
「琴音、この人が最後。私の同期の宮沢真帆。同期のみんなは、みやっちとか、まほまほとか呼んでる。営業成績もすごいし、有名大学卒業してて、めっちゃ賢いんやで」
最後に紹介してくれた光莉さんの同期だという宮沢真帆さんは、長身でとてもスタイルが良い美人だった。顔のどのパーツもすっきと整っていて、見るからにエリート社員という感じだ。
どちらかといえば背が低い光莉さんと並ぶと、漫才コンビのようにも見えるが、どちらも成績優秀な営業社員。きっと仲良しコンビなのだろう。
解れてきていた心がまた少し、固くなってしまう。
だけど、宮沢さんはにっこりと女神のような微笑みを浮かべて、私を見つめた。
「こんにちは、宮沢真帆です。めっちゃ賢いわけではないけどね。去年まで大阪支社にいました。光莉とは一緒に大阪の営業部で頑張ってましたー。この子、いろいろとはちゃめちゃなところあるけど、琴音ちゃん、面倒見てくれてありがとう」
「誰が面倒見てくれて、やねん。私が琴音の教育係やねんけど?」
「いやいや、誰がどう見ても琴音ちゃんのほうがしっかりしてそうじゃん」
「いやあ、まあ、それは間違いないわー」
ハハハッ、と光莉さんが弾ける笑顔を見せる。光莉さんが今まで私に見せてきた中で、一番まぶしくて尊い笑顔だった。思わず目を眇めてしまう。
「ああ、ごめん。うちらのノリ、鬱陶しいよな」
「い、いえ、そうじゃなくて!」
無意識のうちに顔を顰めてしまっていたようで、慌てて手を横に振る。
「お二人が、すごく仲が良いんだなぁと感じて、なんか……いいですね」
正直私は、宮沢さんが羨ましかった。
光莉さんにこんなふうに喜ばせることのできる彼女に、嫉妬してしまったのは事実だ。だけど、この場にはそぐわない感情を撒き散らすわけにはいかず、貼り付けた笑みで答えた。
「へへ、そお? 普段はライバルやけどね?」
「そうそう。光莉には敵わんのよ。札幌に異動して良かったって思ったわ」
「ちょ、それはさすがに寂しいわ! ええ……悲しいー」
悲しい、と言いながらも、やっぱり光莉さんは笑っていて、でもほんの少し切なそうに眉尻を下げたのを、私は見逃さなかった。



