辺りはすっかりと緑が生い茂り、蝉の声が季節を知らせる。
縁側に付けた風鈴が、鈴音と共に微風を運ぶ。
あれから、二ヶ月の月日が過ぎた。
紬は能見家にも慣れ、使用人たちとも打ち解た。
そして――。
「おはよう。紬」
「おはようございます。旦那様」
隆臣とも良好な関係で契約結婚を続けている。
紬の誕生日は、あと二ヶ月後。
このまま順調にいけば、婚姻して正式に夫婦になる。
誰もがそう思っていた。
一方でーー。
「まぁ。隆臣さんったら…結婚するお相手が見つかったのに、親である私達に報告にも来ないなんて…どういう了見かしら?」
「まぁまぁ。僕達が遊びにいけばいいじゃないか。隆臣が女性に惚ける顔も見てみたいものだ」
そのような会話が、能見家の別邸で行われているとは誰も思っていなかった。
座敷で茶を飲んでいる隆臣。
シマからとある事実を聞くと、飲んでいた茶が気管に入り、激しく咳き込んだ。
「ぶっ…! お、おい…シマ…今、何と申した」
「だ、旦那様…大丈夫ですか…?」
隣にいた紬が背中を摩る。
着物に溢れた茶をハンカチで優しく拭えは「…すまない。ありがとう」と伝え、すぐにシマの方を見た。
「ですから…大旦那様と、大奥様に二ヶ月後に奥様と入籍し、正式に夫婦になるーーという旨の手紙をしたためました」
「…返事は来たのか」
「はい。近いうち、お見えになるそうです」
シマの答えを聞けば、眉間に皺を寄せ大きくため息を吐いた。
「お前…なぜ…」
「当然です。特に、大奥様は常日頃から能見家の将来を心配されていましたから、定期的に文を送っております」
「近いうちに…はぁ…」
シマを含め、使用人達は隆臣と紬が契約結婚という事を知らない。
他の令嬢との縁談話の時、結納金として相場の三倍を支払っていた隆臣。
しかし、紬の時だけは彼女の能力を含め早く保護しようと相場の五倍の結納金を支払った。
使用人達の事は誤魔化せているが、実の両親を欺けるかという点において隆臣の不安は強かった。
「大旦那様も大奥様も、大変喜ばれていましたよ。ただーーご自分で報告なさらなかった事だけは、引っかかっているようですが」
「それは…正式に入籍してから、と思っていた」
「それはなりません。能見家は、代々盛大に各地で挙式をし、各地にいる分家とも交流する場になるのですから。早いに越したことはありません」
結婚において、知らない言葉が出れば小首を傾げた。
そんな紬に向くと、シマは口を開いた。
「奥様。能見家の結婚は、特別とされており、帝都、旧都、北都、南都、そして西都の五箇所で結婚式を取り行うのです」
「えっ…! そ、そんなに…ですか…?」
「多すぎる。呪術の解除を行う帝都だけでいいだろう」
「なりません!」
シマが声を荒げると、隆臣と紬は肩を震わせた。
「…ともかく、大旦那様方がお越しになるのは、そのお話をしたいというのもあるかと思います」
そう告げると、シマは一礼をして部屋から出た。
二人きりになると、またため息をこぼす隆臣。
「あ…あの…それほど、お義父様達って…?」
「いや… 紬が気に病む必要はない」
紬を安心させようと告げたが、隆臣の顔には翳りがあった。
そんな彼を見て、紬の内心も穏やかではなかった。
あれからさらに数日経過した。
しかし、隆臣の両親は来ていない。
緊張はありつつ、少しずつ普段通りの平穏を取り戻していた。
「紬」
「旦那様。いかがなさいましたか?」
少しでも時間が経つのを早く感じさせようと、使用人に混ざり玄関へ続く石段の掃き掃除をしていた紬。
そこへ声をかけた隆臣に小首を傾げた。
「その…両親の事、気負わせていないか…と、思ってな」
「いえ…私は…」
隆臣に気を遣わせていると思い、胸の前で小さく手を振った。
「そう、か…それと、紬。これは提案なのだが、良いか?」
「提案…ですか?」
尋ねると、こくりと頷く隆臣。
「父上も、俺と同じ精神干渉ができる。そうなるとーー俺の挙動におかしなところがあれば、心を読まれーーこの関係に気付くかもしれない」
「なるほど…」
由緒正しい家の当主が、契約結婚で妻を迎え入れたというのは心象が良くないかもしれない。
そう考えたのだと思い、小さく頷いた。
「そこで…一つ、提案がある」
「提案…?」
ぱちぱちと瞬きを繰り返す紬に、隆臣は口を開いた。
「少しだけ、夫婦らしいことに慣れておかないか?」
きょとんと小首を傾げる紬に、隆臣はスッと手を差し出した。
「例えば…手を繋ぐ…とか、どうだろう?」
「えっ…!」
隆臣の提案に、耳まで赤くなる紬。
「てっ、て…てっ…手、ですかっ…!?」
動揺し過ぎて、ホウキを手放してしまう紬。
慌てて拾おうとしゃがみ込むと、心臓がバクバクして、意識をし過ぎて目を見ることができない。
「紬。大丈夫か?」
当の本人である隆臣は、何事もないかのように紬の顔を覗き込む。
顔が近い。
思わず退こうとしたら、体制を崩しそうになった。
「ひゃっ…!」
短い悲鳴を上げ、ぎゅっと目を閉じる紬。
「あぶなーーっ!」
支えようとしたが、彼女の背後の違和感に気付くと手を引っ張り自分の方へ引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
その瞬間、紬の背中ギリギリに手裏剣のように鋭いかまいたちが通り過ぎた。
「あら。避けるだけの余裕はあったのね。てっきり、嫁をもらっておきながら他の女にうつつを抜かすくらいだからーー弱体化したと思ったのだけれど、風を避けるのは余裕だったかしら?」
声のする方を見れば、今度は手の平の上でゆらゆらと揺れる火の玉を持ったまま、こめかみにピキピキと血管が浮き上がる女性。
他国の貴族が着るような華美な赤いドレスに身を包み、髪は縦に巻かれたウェーブ。
派手な赤い口紅が良く似合う映えた顔立ち。
(ど…どちら様…!?)
紬は、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「…何をするのですか。母上」
「えっ…! お、お義母さーー」
「貴女にそのような呼ばれ方をされる覚えはなくってよ!」
「っ…」
ピシッと指をさされれば、ビクッと肩を震わせ、俯く紬。
(やはり、私なんて…認めてもらえないんだ…)
悲観的になると、ぎゅっと着物を握った。
そんな紬を見ると、隆臣の中にある何かが切れた。
「いくら母上であろうと、俺の婚約者に手をあげそうになったんだ…今日が命日だと思え」
「まぁ。随分な口をきくようになったじゃない。当主としての自覚が足りないのではなくって?」
静かに怒る隆臣を前にしても、余裕の表情を浮かべる女性。
静かに火花を散らしていたその時ーー。
「お…大奥様っ…! おやめくださいっ…!」
使用人達が駆け寄り、紬の前に庇うように立った。
「あなた達…まさか、グルになってようやく嫁いでくれる私の可愛い娘の邪魔をしようって言うんじゃないでしょうねっ! 戯けた息子の手助けをしようっていうなら!」
一人険しい形相で睨みつける女性。
しかし、紬の中でこの人物が誰であるか分かると、ポッと頬を赤らめた。
「大奥様。お久しゅうございます」
「っ! シマ! あなたがいながら、息子の不貞を許しているの!?」
「不貞ではございません。あちら、奥様です」
「…はぁっ!?」
紬を紹介するシマ。
女性は紬と隆臣を交互に見た後、大奥様の声は響き渡った。
「まぁまぁ。僕の摩耶ちゃんがそそっかしいのは昔からじゃないか。そんなにツンツンしないでくれよ。隆臣」
先程の一件から一時間が経とうとしていた頃、客間には地獄のような空気が流れていた。
客間には、明らかに不機嫌そうな仏頂面の隆臣。
勘違いしたと分かり、恥ずかしそうに頬を赤らめて小さくなる母・摩耶。
そして、穏やかに笑うのは摩耶の夫であり、隆臣の父ーー能見家前当主・一臣。
「ごめんなさい、隆臣さん…私、てっきりあなたが、使用人とそういう仲になったのかと…」
先程までの威勢とは異なり、しおらしく謝る摩耶。
「ふざけないで下さい。勘違いでは済みません。もし、紬に当たっていたら…大怪我ですよ」
淡々と告げる隆臣に、一層小さくなる摩耶。
「まぁ、たしかに今回の件は僕の摩耶ちゃんがちょっとばかり悪いのだけれど」
「…ちょっと?」
「まぁまぁ。それに、能見家当主として、あの場にいて妻に怪我をさせていたとしたらーーそれこそ、格が落ちたと言われるぞ。隆臣」
穏やかな笑みは崩れていない。
それなのに、有無を言わせぬ圧を感じ、隆臣は息を飲んだ。
そしてまたしばし、無言の間が続いていたが襖越しに声が聞こえた。
「旦那様。奥様をお連れしました」
「…あぁ」
高園の声がして、短く返事をすれば襖が開いた。
「申し訳ございません。お待たせいたしました」
紬が三人に頭を下げてから部屋の中に入ってきた。
淡い桜色を基調とした着物で、足元には白い小花の柄が散りばめられている。
うっすらとした化粧は和服とぴったりな色合い。
髪は言わず長い黒髪を下ろしたままにしており、紬の儚さが増している。
その姿には、三人とも息を飲んだ。
「まぁっ…! 可愛らしい! 貴女、最初からそのたたずまいで来てくれたら良かったのにっ」
先程までの落ち込みとは一変、けろっとする摩耶。
「僕の摩耶ちゃんの昔にそっくりじゃないか」
「嫌だわあなた。私はこんなに可愛くないわよ」
「何を言うんだい。僕にとって、キミはいつでも可愛いとも」
息子の家で、手を取り合い愛を確かめ合う二人。
呆れたように隆臣が「こほん」と咳払いをすると、二人は口をつぐみ、紬は二人の方を見た。
「先程は、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした」
「とんでもないわ。貴女は全く悪くないもの。ささっ。こちらに座りなさい」
紬に嬉しそうに話しかける摩耶は、一臣との間をトントンと叩いた。
「わざわざ狭い所へ座る必要はない。紬、こちらへ」
「は、はい…旦那様」
隆臣の隣に控えめにちょこんと座れば、摩耶の視線は紬に釘付けだ。
「ーーそれで、今日は何ですか」
「…まぁ。随分なご挨拶ね。シマから聞いたわよ? そちらの紬さんと二ヶ月後に入籍なさるんですって?」
隆臣の問いに、ツンとした態度で答える摩耶。
「…それが何か?」
「あと、二ヶ月しかないのに挨拶に来ないなんてーーそんな息子に育てた覚えはなくってよ?」
負けじと応戦する隆臣だが、摩耶は間髪入れずに返した。
「報告など、不要でしょう。俺達は、結婚式をするつもりはありません」
「えっ…?」
「…なんですって?」
隆臣から出た言葉に、先に反応したのは紬。
能見家の結婚式は特別なもので、五つの都それぞれで行われると聞いていた。
紬はホッとしていた。
五回も結婚式をする程の美しさも、隆臣に見合う女性でもないと自覚していたからだ。
しかし、摩耶はそれを許さない。
「これは、能見家が伝統を守ってきた儀式。そして、結婚式は紬さんのもの。勘違いしないで、貴方のものではなくってよ?」
そう言い放てば、次はニコニコして紬を見る摩耶。
「紬さんだって憧れるでしょう? 五回は挙式をするから…ドレスだってたくさん着られる。可愛いわよ? 昔から、贔屓にしている洋服店があって、そこの方が世界に一つだけのドレスを仕立ててくれるのっ」
当時のことを思い出しながら、嬉しそうに話す摩耶。
高園に綺麗にしてもらえるようになってから、その類の話に目がない紬は、自然と笑みが綻んだ。
「隆臣。紬さんの顔が物語っているではないか」
一臣がそう伝えれば、隆臣は小さく息をこぼした。
「…分かりました。夫婦で検討します」
「ええっ? 検討じゃないわよ? 仕立て屋さんは、ここへ来る道中にあるから明日紬さんが行くって伝えて来たわよ?」
「…はい?」
摩耶の話の速さに、隆臣の目が点になった。
「…待ってください。俺は明日、任務なのですが」
「貴方が行ってどうするのよ。紬さんの採寸とかをするのに…付き人がいるでしょう?」
「しかし…!」
「まぁまぁ。隆臣も変わったものだなぁ。それほど妻と離れたくないとは…」
うんうん、と頷きながら話を聞く一臣。
「そういうことではなくーー」
「とにかく! これは決定事項なの。あと二ヶ月しかないのよ? 本当は今日がよかったのだけれど、あちらにも都合があるのよ」
「こちらにも都合があります」
隆臣が何と言おうとも、摩耶は聞く耳を持たず、涼しい顔で扇子を扇いでいた。
「紬さん」
「は、はい…!」
摩耶が紬の方を見ると、ニコッと笑いかけた。
「金に糸目はつけないから、何でも存分に仕立てなさい。それとーー」
扇子をパチンと閉じると、摩耶の頬は少し赤らんでいた。
その表情に、紬はきょとんと首を傾げた。
「その…紬、ちゃんって呼んでもいいかしら…? ほら、あの…! 紬さん、って…ねぇ!? これから家族になるというのによそよそしいじゃないの…!」
閉じたばかりの扇子を開けば、慌ててパタパタと扇ぐ摩耶。
「えっ…は、はい…勿論です。えっと、それでは私は…お母様ーー」
紬も呼び方を尋ねようとしたら、継母の記憶がフラッシュバックした。
それ以上言葉が出なくなると、唇をきゅっと噛み締めた。
「紬…?」
いち早く異変に気付いた隆臣が顔を覗き込む。
紬は無理をして笑った。
「申し訳ございません。何でも…」
「お母様…? 貴女にそう呼ばれたくはないわ」
「っ…」
摩耶にそう言い切られると、紬は口を紡いだ。
(やはり、私はーー)
実母は、紬を出産した際に亡くなった。
継母には、『妾の子』として苛まれてきた。
母に縁のない紬には、摩耶に拒まれる未来を容易く想像できてしまった。
しかし、摩耶が続けた言葉は予想とは反するものだった。
「ママとお呼びなさいっ」
「マ…ママ…?」
「それじゃあ、僕の事はパパと呼んでもらおうかな?」
摩耶の言葉にぽかん、としているとしれっと手を挙げて参加する一臣。
紬は目を丸くして瞬きを繰り返した。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
そんな感覚は、生まれて初めてだった。
隆臣は短く息を吐いて呆れた。
「さぁ。呼んでごらんなさい?」
ふふんと鼻を鳴らし得意げに言う摩耶。
紬は恥ずかしそうにしながらも、おずおずと口を開いた。
「マ…ママ、様…」
「まぁっ!」
呼ばれると、嬉しそうに目を潤ませ口元が緩む摩耶。
「紬さん。僕の事も、パパと呼んでみておくれ」
「パ…パパ、様…」
次は一臣を呼べば、彼の表情は一層穏やかになった。
「おぉ…! 僕の摩耶ちゃんが言っていたように、やはり娘はいい。可愛いね」
「でしょう…! そうでしょう! だから、早く行きましょうって何度も言ったのに…!」
「ごめんよ。キミの願いは全て叶えてあげたいのだけれど、どうしても外せない用事だったんだ」
「あなた…」
二人は紬への関心から、手を握り合って互いの世界に浸る。
そんな二人を見ていると、紬は自然と笑みが溢れた。
(素敵…これほど仲睦まじく、長い間共に隣を歩んで来れたなんて…)
こんな夫婦になれたら、どれほど幸せなのだろうーーそんなことを、初めて思った
その最中「こほん」と隆臣が咳払いすると、口を開いた。
「…もう、いいですか。そういうのは、自宅でしてください」
「つい最近まで、僕達の家だったのに?」
「今の当主は俺です」
呆れながらそう返せば、一臣はこくりと頷いた。
「そうだな。摩耶ちゃん、僕達はそろそろお暇しようか」
「えぇっ…! 来たばかりじゃないっ」
「摩耶ちゃん…」
一臣が言うと、不満そうにする摩耶。
しかし、一臣はそっと彼女の耳元に顔を近付けた。
「世のお嫁さんは、姑が長居するのを嫌がる事があるそうだ」
「っ…!」
「これからずっと家族なのだから、ゆっくり歩めばいいーーそうじゃないかい?」
そのような会話が繰り広げられているとは知らず、小首を傾げる紬。
(何をーーお話しされているのだろう…?)
じっと二人を見ていると、摩耶が勢いよく立ち上がった。
「そうね。私達、お暇するわ」
「あっ…もう…?」
自然と紬の口から出た言葉に揺らぐ表情を浮かべる摩耶。
しかし、グッと堪えた。
「えぇ! 今日のところはね! それに…一月後、会えるもの!」
「…また来るんですか」
呆れたように返す隆臣。
「いいえ? …あれ、言っていなかったかしら? 一月後、貴方達のお披露目を兼ねて帝都中の異能一家を招いて催しをするって事。あなた、私…言わなかった?」
「うん。言っていないね?」
一臣に尋ねれば、こくりと頷かれ「あら、そうだっかしら?」とだけ返事をする摩耶。
「はっ…!?」
「だって、結婚式の事も言ってこないし…能見家のことですもの! 入籍前に、みなさんに祝って頂きましょう!」
驚愕する隆臣をよそに、摩耶は目を輝かせた。
「それじゃあ明日の仕立ては、一ヶ月後のドレスもお願いしましょうね? あちらが無理を聞いてくださったからっ」
ニコニコと楽しそうに話せば、ヒラヒラと手を振って先に玄関の方へ向かう摩耶。
「本当楽しそうだね。僕の摩耶ちゃんは」
「父上もお帰りください」
隆臣がため息混じりに言うと、一臣はニコニコと笑みを浮かべたまま口を開いた。
「それはそうなんだが、キミ達にお願いがあってね?」
「何ですか」
呆れたように返す隆臣だったが、一臣の言葉に目を見開いた。
「どのような婚姻の形でも構わないけれどーー僕の摩耶ちゃんを悲しませるような事だけはしないでくれよ?」
「っ…」
「父上、それはーー」
まるで、全てを見透かしているような一臣。
隆臣が言葉を続けようとしたら、人差し指をそっと口元に当てて話した。
「みなまで言わないよ。紬さんも、それだけはよろしく頼むよ?」
「は、はい…」
それだけ告げると、一臣も玄関の方へ向かった。
前当主夫妻の突然の計らいにより、紬の初めての街へ出かけるという日程が決まった。

