「その年頃となれば、早ければ子を設け自立をしている。そこで、お前にも自立をし、これ以上桜庭家の迷惑にならないよう努めてもらいたい」
「…えっ?」
思わず声が漏れれば、博はため息をついた。
「お前には金輪際、我が家の敷居を跨がせん。今日中に荷物をまとめ、明日には出て行け…良いな?」
「…かしこまりました」
喉が詰まりそうになるのを堪え、深々と頭を下げた。
再び顔を上げた時に真っ先に目に入ったのは梅と紅葉のニタニタとした嬉しそうな表情だった。
梅と紅葉は、口元を隠すことすらせず笑っていた。
「あの…お父様」
「…何だ」
しかし、白花が口を開けば三人の表情が曇った、
「お祖父様の形見を…持って行ってもよろしいでしょうか」
「…好きにしろ。あの老耄が遺した物など、微塵の興味もない」
「はい。ありがとうございます」
再度、頭を下げた。
白花には、六歳の時に亡くした母方の祖父がいる。
祖父は、母に代わり深い愛情を注いでくれた大好きな存在。
あの頃だけは、笑うこともできた。
そんな思い出の品々を失いたくなかった。

