能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「無能…? 嘘…藤乃様の施しはすごかったです…さっきだって、みなさんに慕われてて…」

白花は小さく首を横に振りながら、小さな声で伝えた。
すると、藤乃は目を細めて優しい顔になった。

「それは、私が水瀬を出てからの話です」
「出てからの…?」
「えぇ。主人と結婚して、治癒師として成長する機会を頂けました。今でも未熟なところはあります。でも、みなさんが私を必要としてくれるなら全力で応えたい…この気持ちは昔も今も、忘れた事がありません」

はっきりとした言葉で凛と言う彼女に、白花の気持ちは強まるばかりだ。
そして、自分と重ねていた。

いつか、彼女のようになれる気がするーーそんな希望が芽生えた。

「もし、借りれるとすれば…さすがに、帝の命なら聞いてくれそうですけれど…私に、そのような事…今、帝の名前を出したのも烏滸がましい」

藤乃がそう言えば、白花は自然と朔の方を見た。
朔も藤乃の言葉に口角を上げた。

「藤乃様」
「えっ…?」
「帝にお頼みいただけるよう、御三家ーー『闇』の当主として承ります」

朔が藤乃にそう告げれば少しして、「ふふっ」と声を漏らして笑った。