能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「あの、藤乃様」
「はい…? どうなさいました? 黒宮様」

護と藤乃が渋い顔をしていると、朔が口を開いた。

「水瀬といえば、治癒の名門。治癒の異能を持つ者自体、希少。そうなれば、治癒と関係を切っても切れないーー最も近いとされる命の加護者に協力しないとは考えづらいのですが」
「水瀬はたしかに名門。しかし、黒宮くん。キミは水瀬について治癒の一族と呼ばれる以外ーー情報はあるか?」

藤乃に対する問いを横にいた護が質問で返した。

「いえ…俺は治癒一族としか」
「そうでしょうね」
「…はい?」

護の答えに、朔の眉間には皺が寄った。

「あの一族は、家の成長の為に外部に情報をほとんど漏らさず名門と呼ばれるまでになった。その一族が、外部に情報を漏らすと思いますか? 特に今の当主…すみません」

途中まで言うと、護が口元を押さえ藤乃に謝った。

「…いえ」
「…?」

話が読めず、白花と朔が小首を傾げた。

「…私、水瀬家の人間なんです。今の当主は父です」

気まずそうに藤乃が答えた。

「しかし、それなら…」

朔が口を開いたがそれより先に藤乃が表情を曇らせて遮った。

「申し訳ありません…私は、水瀬家の…無能、だったので。父に頼む事は…できません」
「えっ…!?」

藤乃の言葉に、白花が思わず声を漏らした。