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昼過ぎになると、桜庭家の人間の為に用意をした昼食の残りをサッと胃袋に流し込んだ。
午後からは庭掃除の為、竹箒を持って歩いていると「白花様」と背後から声をかけられ振り返った。
「旦那様が書斎へお呼びです」
「…はい」
竹箒を倉庫に戻すと、屋敷に入り当主の書斎の前に正座をした。
「白花、参りました」
「…入れ」
許可を得ると、襖を開けた。
書斎は十畳ほどの広さがあり、置かれているのは文机と本棚だけだった。
その中には、当主である白花の父・博と梅と紅葉がいた。
博は厳格な様子で緊張感がある。
それとは対照的に、梅と紅葉の表情には緩みがあり違和感のある空間だ。
「お前ももう十七…あと二月もすれば十八になるな」
博の言葉に、白花は静かに頷いた。
「同じ年頃の娘は嫁ぎ、家の繁栄に貢献している。お前は何をしている?」
「…申し訳ございません」
桜庭家の長女として、縁談の話がなかった事もない。
愛想の欠片もなく、表情も変わらず、異能も持たない娘――世間はそう見ていた。
名家の子息達の間では、『能面令嬢』と陰で揶揄されていた。
そんな彼女を嫁にしたいという者は一人もいなかった。

