能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「ねねっ。小春にも教えてくださいっ。白花様の!」
「えぇっ…?」

先程白花がしたように、両手で空をそっと囲むようにしてぱっと左右に広げた。
愛らしい姿に、白花の心はぽっと温かくなった。

しかし、幸せな時間はそう長くは続かない。

「小春さん! 何をしているの…!」

廊下から白花と話している小春に飛んだ怒号。
桜庭家で異能の座学を教える女性教師だった。
時間になっても部屋に来ない小春に痺れを切らした。

「ご…ごめんなさい…」
「早く入りなさい…! 貴女はアレとは違うのだから」
「そんな…でも、白花様は…」

ビクビクと怯えながら話す小春。
女性がギロリと睨みつけながら言うと、白花の方を見ていた視線を戻して屋敷の中へ入って行った。

「将来有望な子なのです。貴女とは違うのですから」
「申し訳ございません」
「この事は当主様にも報告致します」

白花が深々と頭を下げると、苛立ちを露わにして襖を閉め切った。

(小春様まで叱られてしまった…)

伏目になり、表情は変わらないものの白花の雰囲気はどんよりとしていた。