能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


祖父の部屋を出て、自室に戻った。
白花の部屋は、元々物置だった為広さは三畳ほどで日当たりも悪い。
日中でも、常に電気を点けなければならないほど。
布団を敷いたら、部屋のほとんどが埋まってしまう。
その為部屋にはほぼ何も置くことが出来なかった。

「白花様…小春です」
「どうぞ」

祖父の遺品と少ない荷物をまとめていると、ゆっくりと襖が開いてひょこっと小春が顔を出した。

「白花様…さっきは、ごめんなさい。小春、何も言えなくて…」
「気になさらないで下さい。私の方こそ、小春様のお勉強の邪魔をしてしまい、申し訳ございません」

三つ指ついて深々と頭を下げれば、小春はすぐに駆け寄った。

「そんな…! 白花様は何も悪くないっ」

白花の正面に座れば、体をぐいっと押した。
頭を下げさせるのをやめさせると、小春と目が合った。
彼女の目は、今にも溢れそうな涙で潤んでいる。

「みんな…みんなおかしいっ。どうして白花様をいじめるの…? 白花様は、異能だってあるのに…!」
「小春様…私の力は、異能ではないのです」

白花は優しく首を横に振った。
小春の必死な想いを受け止めるように、静かに微笑もうとして――それすらできなかった。
異能を持って生まれるのは、人口の二割強。
桜庭家では、代々異能は男児にしか発現しないとされてきた。
だから、白花に異能がないと思われていても、不思議ではなかった。
むしろ、紅葉に異能が発現した日から、白花の居場所は少しずつ失われていった。