屋敷から女が減った。
寧々子のような女が消えて、男女問わず本当に孤月に用事のある人間だけが出入りしている。そういう人は灰禰にも良くしてくれるので、屋敷にも気軽に近づけるようになった。
特に孤月の友人だという百目鬼市倉は、灰禰を見るなりガシッと両手を取り「あなたが奥方か。絶対に孤月を見捨てないでやってくれ」と懇願してきたので何かと思った。孤月がいつになく不機嫌そうに「灰禰に触らないでくれる」と文句を言っていたのも謎だったが。
巴に事情を聞くと、悪戯っぽい顔で教えてくれた。
「当主様のご命令ですよ。最近は、夜遊びも全くなさっていないんです」
確かに最近の孤月は、瘴気も出ていないのに離れに来ることが多い。用事があるのかと思えば、たわいもない雑談をするだけで帰っていく。
ある日の午後、離れの座敷で洗濯物を畳みながら、灰禰は欠伸をした。巴は屋敷の方で仕事をしており、灰禰一人だ。
丸窓の向こうには灰色の空が広がり、雨が絶え間なく降っている。地面を打つ雨雫の音が、部屋にひっそり響いていた。
全ての洗濯物を畳み終え、灰禰は壁にもたれた。
(なんだか今日は、すごく眠い。少しだけ……)
眠りに引きずりこまれる間、雨音だけが耳に残った。
*
雨がやんだ、と思って灰禰は目を覚ました。
途端、こめかみにずきりと痛みが走って呻く。手をついた先は、湿り気を帯びた地面だった。そんなはずはない。灰禰は座敷の畳で寝ていたはずなのだから。
焦って見回すと、灰禰は見知らぬ地下空洞にいた。
鍾乳洞だろうか。あちこちに燭台が置かれ、凸凹した岩壁をぼんやり照らし出している。灰禰は中央に据えられた小部屋のような牢に閉じこめられていた。
地上に繋がるらしい唯一の道から、人がやってくる。
「ふん、起きたか」
燭台の明かりが浮かび上がらせたのは、知らない老爺だった。
皺の刻まれた顔には白い髭を蓄え、歳の割に豊かな髪を綺麗に撫で付けている。黒い着物に黒い袴を着た姿は、闇に溶けてしまいそうだった。
この老爺が灰禰をここへ攫ったのか。そう問い詰めなくてはならないはずなのに、灰禰は声が出なかった。
その手にある物に目が釘付けになっていたからだ。
「天狐の尾——!?」
滑らかな黄金色の毛皮に覆われた尾だった。呪符のようなものが貼られている。あいにく灰禰は、尾を失った天狐の妖憑きというのを一人しか知らない。
「あなたが孤月の尾を奪ったのか」
立ち上がり、思い切り老爺を睨みつける。老爺は微塵も気にせず、冷酷な面差しで鉄格子の前に立った。灰禰は一歩前へ出て、声を尖らせた。
「あなたは誰だ」
「百目鬼家当主たるこの儂を知らぬとは凡愚にも程があるな、土雲の生き残りよ」
はっと灰禰は瞬いた。孤月のそばで過ごすうちに華族の名にも詳しくなっている。確か百目鬼家の当主は市倉の父親で、徳造とかいう名前だったはずだ。
(それよりも、土雲と言った?)
灰禰の素性を知っており、なおかつ孤月の尾を持っているとなれば。
灰禰は鉄格子を激しく掴んでいた。
「お姉ちゃんはどこへ行ったの!?」
叫びが岩壁に跳ね返って天井までこだまする。しかし徳造は眉一つ動かさず、平板な声色で答えた。
「あの娘ならとっくに死んだ」
鉄格子を揺らす灰禰の手が凍りついた。
指先から血の気が引いていく。たった今聞いた言葉を押し返すように、甲高い耳鳴りが鼓膜を襲う。視界がぐるぐる回り、息を吸っているのか吐いているのかわからなくなった。
「……は」
乾いた唇からこぼれたのは、返事とも吐息ともつかぬ言葉の切れ端。
足から力が抜け、立っていられなくて鉄格子に頭を押しつける。目をいっぱいに見開いているのに、映るのは現実の景色ではなく、過去の思い出ばかりだった。
——必ず戻ってくるから。
微笑むときに、目尻がきゅっと細くなるのが好きだった。頭を撫でてくれる手はいつだって温かく、抱きつけば優しく迎えてくれた。寒くて眠れない夜に歌ってくれた子守唄が、毛布みたいに体を包む感触まで覚えている。
——待っててね、灰禰。
あなたがそう言ったから、ずっと待っていたのに。
燭台の火が揺れ、灰禰の影を黒々と地面に伸ばした。
「十二年前、儂はあの娘を誘い出し、妖術で洗脳した」
徳造の語りに、灰禰は辛うじて顔を上げる。燭台を背にした徳造の冷然とした面差しは、暗い影に覆われていた。
「儂は百目鬼家の当主として、妖夜祭で一番にあり続ける必要があるのだ。だが、あの天ヶ崎家の小僧は九尾の力を発現させていた。我が息子は頼りない。百目鬼家が二番手に甘んじるなど、許せるものか」
ぎり、と徳造が歯を食い縛った。尾を持つ手がわなわな震えている。徳造の妄執が洞窟中に満ち満ちて、喉が塞がりそうだった。でも灰禰にとっては、尾が傷つかないかだけが気にかかった。
「どうにかして孤月の力を削がねばならなかった。しかしあの強大な妖憑きを傷つけるなど、同じ妖憑きにはできはしない。そこで目をつけたのが土雲の術だ」
落ち窪んだ徳造の目が、灰禰を射貫く。
「土雲家が困窮しているのは知っていた。だから高額な報酬を用意して土雲美紅を誘き出した。ただの女中の仕事と偽ってな。そうしてのこのこやって来たあの娘に妖術をかけ、天ヶ崎家に潜入させたのだ」
灰禰の喉からうめき声が漏れそうになる。やはり姉は自分の意思で孤月の尾を切り取ったのではなかったのだ。
姉の優しさは、偽りではなかった。きっと灰禰だって愛されていた。
思考が回り始め、灰禰は疑問をこぼした。
「……なら、どうしてまだ孤月の尾がそこにある。力を奪うのが目的なら、燃やすなり傷つけるなりするのでは」
徳造が大きく嘆息した。
「そうだ。孤月の尾を用いて、儂自身の力を強くするつもりだった。だが、あの忌々しい娘が尾を渡す寸前で正気に戻り、命と引き換えに封印の術を施したのだ」
姉だって、灰禰と同じように術書を読んで鍛錬していた。
今はもうない土雲の屋敷で、一緒に術書を読み解いた日々が蘇る。姉は何倍もすごかった。色々な術を教えてくれた。
最期に一矢報いた姉を思えば胸に温かなものが広がり、灰禰の口元が綻ぶ。潤み始めた目を袖で拭い、徳造に向き直った。
妄執の老爺を前にしても、灰禰はまっすぐに立っていられた。
「それで、わたしを誘拐した理由は何」
「十二年、どれほど解呪を試みても術が解けぬ。同じ土雲なら知っておるだろう。解け」
灰禰は即答していた。
「知らない」
「嘘をつくな!」
すさまじい怒声が膨れ上がり、洞窟に広がって幾度も反響した。徳造の顔は憤怒に覆われている。小刻みに震える鉄格子に、灰禰は首をすくめた。
本当に知らなかった。
姉の習熟度の方が早く、灰禰の知らない術をいくつも使いこなしていたのだから。
鉄格子越しに徳造と睨みあい、冷ややかに吐き捨てる。
「たとえ知っていたとしても、教えるつもりはない」
徳造の顔から表情が抜け落ちた。能面のような無表情の中で、目ばかりがぎらぎら輝く。「そうか」とひび割れた声で呟くと、懐から短刀を取り出した。
「では、お前の血で解呪の呪言でも書いてやろう。血はよく効くからな」
燭光を浴びた刃が濡れたように輝く。牢から抜け出ようと術を行使した瞬間、またもや鋭い頭痛に襲われた。鉄格子が灰禰に対する封じの役割を担っているらしい。
「解呪の方法を知らぬなら生かしておく価値もないわ」
徳造の力か、ひとりでに鉄格子の扉が開く。灰禰は奥へと逃げた。しかし狭い牢だ。入り口を塞いだ徳造とは腕二本分の距離もない。
「来るな」
鉄格子の隙間から手を出そうとすれば、ばちんと結界のようなものに弾かれて痛みが走った。何度鉄格子を揺らしても、しっかりと地面に埋めこまれているせいで灰禰の手ではびくともしない。徳造の唇に嘲りの笑みが浮かぶ。
「無駄な抵抗を。助けなど来ないというのに」
ぬめりを帯びた嫌な声だった。徳造が一歩距離を詰める。灰禰は鉄格子から手を離し、ぎゅっと手首を握りしめた。
「いいや、助けは必ず来る」
灰禰が宣言したとき、洞窟に足音が響き渡った。
「——僕の妻を外へ連れ出すことを許した覚えはないけれど」
耳に届いたのは、ここ最近でよく知るようになった声。
洞窟の入り口に、白い羽織をまとった孤月が立っていた。形のよい唇は優雅な微笑を作っている。しかし力を押さえきれない様子で、金色の火花がばちばちと彼の体の周りで爆ぜていた。
灰禰を追い詰めようとしていた徳造が固まる。灰禰はひっそり安堵の息をもらした。
孤月は微笑を崩さぬまま、徳造に顔を向ける。
「その娘は僕の囮ですから、勝手に出歩けないように妖術で縛っているんですよ」
徳造の目が、灰禰の手首に巻かれた組紐へ向く。老いた顔面に驚愕が広がった。
「こんなモノ、儂は気づかなかったぞ」
「わざわざご自分の無能さをひけらかさずとも結構ですよ」
孤月が軽く指を鳴らすと、鉄格子があっけなく崩れた。灰禰に降りかかってくるものは一本もなく、徳造めがけて落ちていく。徳造は喚きながらも己の力で弾き返しているようだ。
「灰禰、来い!」
灰禰は地を蹴った。そばに駆け寄るだけのつもりだったのに、孤月に強く腕を引かれてその胸に飛びこんでしまう。
「灰禰、無事? 怪我はないかい」
徳造に向けるものとは違う、毛布でもかけるような柔らかな声音だった。灰禰は孤月の胸元に顔を押しつける。吸う息が震えた。声が出せるようになるまで何度も頷く。
「……だいじょうぶ。ありがとう、助けに来てくれて」
「当然だろ」
しっかりとした腕が背中に回り、じんわりとした温もりに包まれる。もう離さないとでも言いたげな、優しいけれど強い力だ。
「組紐の術が発動して肝が冷えたよ。どこへ行ったのかと思った」
がらり、と鉄格子が崩れる音がした。振り返ると、ばらばらになった鉄格子の真ん中で徳造が荒い息をついていた。
「孤月、貴様ァ!」
着物の襟は乱れ、目は血走り、歪めた口の端は唾液に濡れている。見る者の背筋まで粟立たせる、おぞましく醜悪な表情だった。
身震いする灰禰をよそに、孤月はしらっとしている。
「だいたい話は聞きましたけど、黒幕があなただったとは。市倉が泣いて悲しみますよ」
「うるさい!」
手のひらを突き出した徳造が鬼火を放った。押し寄せる青い鬼火に小さく悲鳴をあげた灰禰を、孤月がぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫。じっとしてて」
孤月は指一本動かさなかった。ひと睨みするだけで鬼火は消えた。
洞窟に沈黙が広がる。
ぜいぜいと呼吸を荒らげ、無為に突き出した手を凝視する徳造に、孤月は宣告した。
「では、僕の尾を返してもらいましょうか」
尾はまだ徳造の手にある。これほどまでに力量差があれば、たとえ孤月の尾を利用できても徳造は勝てなかったのではないか。妖憑きではない灰禰でもそう考えてしまうほど、孤月は圧倒的だ。
百目鬼家の当主を長年務めてきた徳造は、より深く身に染みたはずだ。
「貴様などに渡すくらいなら、封印もろとも焼き尽くしてやる!」
止める間もなかった。
徳造が尾を持ったまま、その手から鬼火を噴き出させた。
灰禰は悲鳴をあげる。青き猛火に包まれて、尾は見えなくなる。封印は尾を守るもの。だがその外から封印ごと燃やされてはひとたまりもないだろう。
「はははは! ざまあみろ!」
徳造の哄笑が耳をつんざいた。
「ぐっ……」
灰禰を抱える孤月の腕に、骨が軋むほどの力がこめられた。耳元で聞こえる呻き声はひどく苦しげで、灰禰は思わず叫んでいた。
「孤月!」
鉄格子が崩れた時点で、灰禰への封じも解けている。今なら術を使える。知っているものならなんでも。孤月の背中をさすりながら、灰禰の呼吸はどんどん浅くなっていった。
(わたしは……何をすればいい?)
尾は天狐の力の源。それを燃やされたのは、心臓を焼かれたのと同義だ。瘴気を抑えるのとは比べ物にならない。怪我を癒やす治癒とも異なる。自分にできることがあるのか。幼い頃学んだ術の真似事をしているだけの自分に?
水をくぐったように視界がぼやけていく。わななく唇がおのずから祈りを紡いだ。
「お願い……お姉ちゃん……」
どうしても、最後に呼んでしまうのは姉だった。
十二年もの間、何者にも手出しさせなかった姉の封印。もしその命の名残がここに留まっているなら、助けを差し伸べてほしかった。
孤月の体がくずおれ、つられて灰禰も膝をつく。顔を覗くと、閉ざされた瞼は蝋のごとく白く冷え切っていた。眉は苦痛に耐えるようにきつく寄せられ、額には脂汗が浮かんでいる。
「灰禰……?」
孤月がうっすらと瞼を上げる。澄んだ榛色の瞳が何かを探し求めるように揺れ、灰禰の面上で焦点を結んだ。
「心配するな。僕は平気だから。灰禰に泣かれる方が辛い」
そんなわけがない。
言い返したかったのに、言葉が喉で詰まり音にならなかった。
せめて泣かないように歯を食い縛る。両手を伸ばして、孤月の頭を抱えこんだ。
「そんな嘘をつかないで……」
この人をどうにかして助けたい。始まりは最悪だったのに。あまたの女に甘言を囁くくせに、灰禰にだけは辛辣で。それなのにときどき優しくて、用もないのにふらりと離れにやって来る。
絶対に死んでほしくなかった。
孤月の息遣いを確かめていたいのに、狂ったような徳造の高笑いにかき消されてしまう。振り払うように頭を振ったとき、脳内で子守唄が聞こえた。
幻聴だとわかっている。あの歌声は、もはや記憶の中にしか存在しない。
灰禰は知らず、その旋律を口ずさんでいた。少しでも、孤月の苦痛が和らぎますようにと祈りをこめて。
鳩尾の辺りが熱くなってくる。孤月との間に、今までよりもずっと確かな霊力の糸が結ばれ、胸底から生まれた大きな力が歌とともに流れ出ていくような感覚がした。
泡沫のように、姉の声が浮かび上がってくる。
——いつか灰禰に大切な人ができたとき、歌ってあげてね。
このまま力を注ぎこめば、灰禰を形作る輪郭がほどけてしまいそうだった。それでもよかった。この人が助かるなら。
「うわあああっ」
声を上げたのは徳造だった。我に返ってそちらを見ると、焼かれていたはずの尾が金色の光を放ち、鬼火を押し返している。
ばちんと激しい音がして、徳蔵は倒れた。
鬼火が消えると同時に、尾が光の粒と化して宙に散る。それはふわふわと漂ってくると、孤月の胸元に吸いこまれていった。
孤月の息が安らいでゆく。
何が起きているのかとはらはらと見守っていると、孤月がはっきりと目を開けた。
「孤月、大丈夫?」
さっきとは正反対に、今度は灰禰が声をかける。孤月は何度か瞬きすると、胸元に手を当て、灰禰と視線を合わせた。
「今……何を……」
「わからない。だけど、お姉ちゃんが助けてくれたんだと思う。それより無事?」
顔からはすっかり汗が引いていた。孤月は体を確認した後、ほのかに笑む。
「なんともない。ありがとう、灰禰のおかげだ」
「よかった……」
どっと脱力し、灰禰は孤月に寄りかかってしまった。孤月が軽々と灰禰を受け止める。頭を撫でてくる孤月の手の重みを感じながら、灰禰は問うた。
「尾はどうなっているの」
「九尾に戻ってる」
治癒よりも遥かに高度な術だ。蘇生に近い。こんな術が誰にでも使えればどう利用されるかわからない。恐らく子守唄が、術を発動する引き金だったのだろう。本当に困ったとき、大切な人だけを救えるように。
出会ったときのことを思い出す。
孤月が九尾に戻れば、囮の花嫁はお役御免。
十二年前、姉に持ち去られ、今は戻ってきた心が、引き絞られるように痛んだ。
それでも孤月の胸に手をつき、灰禰はそっと身を離す。
別れを告げようと口を開いたとき、孤月の人差し指が唇を押さえた。
「何を言おうとしているかだいたい予想がつくけど、言わせるつもりはないから」
おもむろに顔を寄せてきて、掠れた声で囁く。
「愛してる、灰禰。僕は九尾を取り戻したけれど……今度は永遠に、僕の最愛の伴侶になってくれ」
その意味が胸に届いた刹那、頷きたくてたまらなくなる体を、灰禰は全力で押し留めた。もう愛は難しくないけれど、聞きたいことがある。人差し指をそっと外し、灰禰は聞いた。
「わたしは孤月に何をすればいいの」
孤月には迷う気色もなかった。
「僕に愛されていればいい。ずっと僕のそばにいて、ときどき僕の名前を呼んで、無茶をするなら僕の目の届くところだけでやってよ」
「無茶なんかしたことない」
「灰禰は結構好き放題してるよ。そこがいいんだけど」
そうだろうか。思い当たる節がなくて灰禰は首を傾げる。
「わたしに愛してくれとは言わないの?」
孤月がかすかに肩を揺らして笑った。
「それは僕の甲斐性だから。だいたい、今、僕の腕の中でおとなしくしてくれてる時点で答えは出ていると思うよ?」
孤月の手が頬を撫でる。長い指が灰禰の髪をすくって耳にかけた。戯れるように耳朶をくすぐられ、灰禰は笑う。
「すごい自信」
「僕の自惚れ?」
唇に吐息がかかるほどに距離が近づいていた。孤月の目に映る灰禰は、ずいぶん柔らかい表情をした、どこにでもいる普通の女の子に見えた。
「ううん、本当のこと。わたしも孤月が好き」
答えると同時、優しく口づけられる。
灰禰はゆっくりと瞼を下ろし、孤月の温もりに身を任せた。
寧々子のような女が消えて、男女問わず本当に孤月に用事のある人間だけが出入りしている。そういう人は灰禰にも良くしてくれるので、屋敷にも気軽に近づけるようになった。
特に孤月の友人だという百目鬼市倉は、灰禰を見るなりガシッと両手を取り「あなたが奥方か。絶対に孤月を見捨てないでやってくれ」と懇願してきたので何かと思った。孤月がいつになく不機嫌そうに「灰禰に触らないでくれる」と文句を言っていたのも謎だったが。
巴に事情を聞くと、悪戯っぽい顔で教えてくれた。
「当主様のご命令ですよ。最近は、夜遊びも全くなさっていないんです」
確かに最近の孤月は、瘴気も出ていないのに離れに来ることが多い。用事があるのかと思えば、たわいもない雑談をするだけで帰っていく。
ある日の午後、離れの座敷で洗濯物を畳みながら、灰禰は欠伸をした。巴は屋敷の方で仕事をしており、灰禰一人だ。
丸窓の向こうには灰色の空が広がり、雨が絶え間なく降っている。地面を打つ雨雫の音が、部屋にひっそり響いていた。
全ての洗濯物を畳み終え、灰禰は壁にもたれた。
(なんだか今日は、すごく眠い。少しだけ……)
眠りに引きずりこまれる間、雨音だけが耳に残った。
*
雨がやんだ、と思って灰禰は目を覚ました。
途端、こめかみにずきりと痛みが走って呻く。手をついた先は、湿り気を帯びた地面だった。そんなはずはない。灰禰は座敷の畳で寝ていたはずなのだから。
焦って見回すと、灰禰は見知らぬ地下空洞にいた。
鍾乳洞だろうか。あちこちに燭台が置かれ、凸凹した岩壁をぼんやり照らし出している。灰禰は中央に据えられた小部屋のような牢に閉じこめられていた。
地上に繋がるらしい唯一の道から、人がやってくる。
「ふん、起きたか」
燭台の明かりが浮かび上がらせたのは、知らない老爺だった。
皺の刻まれた顔には白い髭を蓄え、歳の割に豊かな髪を綺麗に撫で付けている。黒い着物に黒い袴を着た姿は、闇に溶けてしまいそうだった。
この老爺が灰禰をここへ攫ったのか。そう問い詰めなくてはならないはずなのに、灰禰は声が出なかった。
その手にある物に目が釘付けになっていたからだ。
「天狐の尾——!?」
滑らかな黄金色の毛皮に覆われた尾だった。呪符のようなものが貼られている。あいにく灰禰は、尾を失った天狐の妖憑きというのを一人しか知らない。
「あなたが孤月の尾を奪ったのか」
立ち上がり、思い切り老爺を睨みつける。老爺は微塵も気にせず、冷酷な面差しで鉄格子の前に立った。灰禰は一歩前へ出て、声を尖らせた。
「あなたは誰だ」
「百目鬼家当主たるこの儂を知らぬとは凡愚にも程があるな、土雲の生き残りよ」
はっと灰禰は瞬いた。孤月のそばで過ごすうちに華族の名にも詳しくなっている。確か百目鬼家の当主は市倉の父親で、徳造とかいう名前だったはずだ。
(それよりも、土雲と言った?)
灰禰の素性を知っており、なおかつ孤月の尾を持っているとなれば。
灰禰は鉄格子を激しく掴んでいた。
「お姉ちゃんはどこへ行ったの!?」
叫びが岩壁に跳ね返って天井までこだまする。しかし徳造は眉一つ動かさず、平板な声色で答えた。
「あの娘ならとっくに死んだ」
鉄格子を揺らす灰禰の手が凍りついた。
指先から血の気が引いていく。たった今聞いた言葉を押し返すように、甲高い耳鳴りが鼓膜を襲う。視界がぐるぐる回り、息を吸っているのか吐いているのかわからなくなった。
「……は」
乾いた唇からこぼれたのは、返事とも吐息ともつかぬ言葉の切れ端。
足から力が抜け、立っていられなくて鉄格子に頭を押しつける。目をいっぱいに見開いているのに、映るのは現実の景色ではなく、過去の思い出ばかりだった。
——必ず戻ってくるから。
微笑むときに、目尻がきゅっと細くなるのが好きだった。頭を撫でてくれる手はいつだって温かく、抱きつけば優しく迎えてくれた。寒くて眠れない夜に歌ってくれた子守唄が、毛布みたいに体を包む感触まで覚えている。
——待っててね、灰禰。
あなたがそう言ったから、ずっと待っていたのに。
燭台の火が揺れ、灰禰の影を黒々と地面に伸ばした。
「十二年前、儂はあの娘を誘い出し、妖術で洗脳した」
徳造の語りに、灰禰は辛うじて顔を上げる。燭台を背にした徳造の冷然とした面差しは、暗い影に覆われていた。
「儂は百目鬼家の当主として、妖夜祭で一番にあり続ける必要があるのだ。だが、あの天ヶ崎家の小僧は九尾の力を発現させていた。我が息子は頼りない。百目鬼家が二番手に甘んじるなど、許せるものか」
ぎり、と徳造が歯を食い縛った。尾を持つ手がわなわな震えている。徳造の妄執が洞窟中に満ち満ちて、喉が塞がりそうだった。でも灰禰にとっては、尾が傷つかないかだけが気にかかった。
「どうにかして孤月の力を削がねばならなかった。しかしあの強大な妖憑きを傷つけるなど、同じ妖憑きにはできはしない。そこで目をつけたのが土雲の術だ」
落ち窪んだ徳造の目が、灰禰を射貫く。
「土雲家が困窮しているのは知っていた。だから高額な報酬を用意して土雲美紅を誘き出した。ただの女中の仕事と偽ってな。そうしてのこのこやって来たあの娘に妖術をかけ、天ヶ崎家に潜入させたのだ」
灰禰の喉からうめき声が漏れそうになる。やはり姉は自分の意思で孤月の尾を切り取ったのではなかったのだ。
姉の優しさは、偽りではなかった。きっと灰禰だって愛されていた。
思考が回り始め、灰禰は疑問をこぼした。
「……なら、どうしてまだ孤月の尾がそこにある。力を奪うのが目的なら、燃やすなり傷つけるなりするのでは」
徳造が大きく嘆息した。
「そうだ。孤月の尾を用いて、儂自身の力を強くするつもりだった。だが、あの忌々しい娘が尾を渡す寸前で正気に戻り、命と引き換えに封印の術を施したのだ」
姉だって、灰禰と同じように術書を読んで鍛錬していた。
今はもうない土雲の屋敷で、一緒に術書を読み解いた日々が蘇る。姉は何倍もすごかった。色々な術を教えてくれた。
最期に一矢報いた姉を思えば胸に温かなものが広がり、灰禰の口元が綻ぶ。潤み始めた目を袖で拭い、徳造に向き直った。
妄執の老爺を前にしても、灰禰はまっすぐに立っていられた。
「それで、わたしを誘拐した理由は何」
「十二年、どれほど解呪を試みても術が解けぬ。同じ土雲なら知っておるだろう。解け」
灰禰は即答していた。
「知らない」
「嘘をつくな!」
すさまじい怒声が膨れ上がり、洞窟に広がって幾度も反響した。徳造の顔は憤怒に覆われている。小刻みに震える鉄格子に、灰禰は首をすくめた。
本当に知らなかった。
姉の習熟度の方が早く、灰禰の知らない術をいくつも使いこなしていたのだから。
鉄格子越しに徳造と睨みあい、冷ややかに吐き捨てる。
「たとえ知っていたとしても、教えるつもりはない」
徳造の顔から表情が抜け落ちた。能面のような無表情の中で、目ばかりがぎらぎら輝く。「そうか」とひび割れた声で呟くと、懐から短刀を取り出した。
「では、お前の血で解呪の呪言でも書いてやろう。血はよく効くからな」
燭光を浴びた刃が濡れたように輝く。牢から抜け出ようと術を行使した瞬間、またもや鋭い頭痛に襲われた。鉄格子が灰禰に対する封じの役割を担っているらしい。
「解呪の方法を知らぬなら生かしておく価値もないわ」
徳造の力か、ひとりでに鉄格子の扉が開く。灰禰は奥へと逃げた。しかし狭い牢だ。入り口を塞いだ徳造とは腕二本分の距離もない。
「来るな」
鉄格子の隙間から手を出そうとすれば、ばちんと結界のようなものに弾かれて痛みが走った。何度鉄格子を揺らしても、しっかりと地面に埋めこまれているせいで灰禰の手ではびくともしない。徳造の唇に嘲りの笑みが浮かぶ。
「無駄な抵抗を。助けなど来ないというのに」
ぬめりを帯びた嫌な声だった。徳造が一歩距離を詰める。灰禰は鉄格子から手を離し、ぎゅっと手首を握りしめた。
「いいや、助けは必ず来る」
灰禰が宣言したとき、洞窟に足音が響き渡った。
「——僕の妻を外へ連れ出すことを許した覚えはないけれど」
耳に届いたのは、ここ最近でよく知るようになった声。
洞窟の入り口に、白い羽織をまとった孤月が立っていた。形のよい唇は優雅な微笑を作っている。しかし力を押さえきれない様子で、金色の火花がばちばちと彼の体の周りで爆ぜていた。
灰禰を追い詰めようとしていた徳造が固まる。灰禰はひっそり安堵の息をもらした。
孤月は微笑を崩さぬまま、徳造に顔を向ける。
「その娘は僕の囮ですから、勝手に出歩けないように妖術で縛っているんですよ」
徳造の目が、灰禰の手首に巻かれた組紐へ向く。老いた顔面に驚愕が広がった。
「こんなモノ、儂は気づかなかったぞ」
「わざわざご自分の無能さをひけらかさずとも結構ですよ」
孤月が軽く指を鳴らすと、鉄格子があっけなく崩れた。灰禰に降りかかってくるものは一本もなく、徳造めがけて落ちていく。徳造は喚きながらも己の力で弾き返しているようだ。
「灰禰、来い!」
灰禰は地を蹴った。そばに駆け寄るだけのつもりだったのに、孤月に強く腕を引かれてその胸に飛びこんでしまう。
「灰禰、無事? 怪我はないかい」
徳造に向けるものとは違う、毛布でもかけるような柔らかな声音だった。灰禰は孤月の胸元に顔を押しつける。吸う息が震えた。声が出せるようになるまで何度も頷く。
「……だいじょうぶ。ありがとう、助けに来てくれて」
「当然だろ」
しっかりとした腕が背中に回り、じんわりとした温もりに包まれる。もう離さないとでも言いたげな、優しいけれど強い力だ。
「組紐の術が発動して肝が冷えたよ。どこへ行ったのかと思った」
がらり、と鉄格子が崩れる音がした。振り返ると、ばらばらになった鉄格子の真ん中で徳造が荒い息をついていた。
「孤月、貴様ァ!」
着物の襟は乱れ、目は血走り、歪めた口の端は唾液に濡れている。見る者の背筋まで粟立たせる、おぞましく醜悪な表情だった。
身震いする灰禰をよそに、孤月はしらっとしている。
「だいたい話は聞きましたけど、黒幕があなただったとは。市倉が泣いて悲しみますよ」
「うるさい!」
手のひらを突き出した徳造が鬼火を放った。押し寄せる青い鬼火に小さく悲鳴をあげた灰禰を、孤月がぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫。じっとしてて」
孤月は指一本動かさなかった。ひと睨みするだけで鬼火は消えた。
洞窟に沈黙が広がる。
ぜいぜいと呼吸を荒らげ、無為に突き出した手を凝視する徳造に、孤月は宣告した。
「では、僕の尾を返してもらいましょうか」
尾はまだ徳造の手にある。これほどまでに力量差があれば、たとえ孤月の尾を利用できても徳造は勝てなかったのではないか。妖憑きではない灰禰でもそう考えてしまうほど、孤月は圧倒的だ。
百目鬼家の当主を長年務めてきた徳造は、より深く身に染みたはずだ。
「貴様などに渡すくらいなら、封印もろとも焼き尽くしてやる!」
止める間もなかった。
徳造が尾を持ったまま、その手から鬼火を噴き出させた。
灰禰は悲鳴をあげる。青き猛火に包まれて、尾は見えなくなる。封印は尾を守るもの。だがその外から封印ごと燃やされてはひとたまりもないだろう。
「はははは! ざまあみろ!」
徳造の哄笑が耳をつんざいた。
「ぐっ……」
灰禰を抱える孤月の腕に、骨が軋むほどの力がこめられた。耳元で聞こえる呻き声はひどく苦しげで、灰禰は思わず叫んでいた。
「孤月!」
鉄格子が崩れた時点で、灰禰への封じも解けている。今なら術を使える。知っているものならなんでも。孤月の背中をさすりながら、灰禰の呼吸はどんどん浅くなっていった。
(わたしは……何をすればいい?)
尾は天狐の力の源。それを燃やされたのは、心臓を焼かれたのと同義だ。瘴気を抑えるのとは比べ物にならない。怪我を癒やす治癒とも異なる。自分にできることがあるのか。幼い頃学んだ術の真似事をしているだけの自分に?
水をくぐったように視界がぼやけていく。わななく唇がおのずから祈りを紡いだ。
「お願い……お姉ちゃん……」
どうしても、最後に呼んでしまうのは姉だった。
十二年もの間、何者にも手出しさせなかった姉の封印。もしその命の名残がここに留まっているなら、助けを差し伸べてほしかった。
孤月の体がくずおれ、つられて灰禰も膝をつく。顔を覗くと、閉ざされた瞼は蝋のごとく白く冷え切っていた。眉は苦痛に耐えるようにきつく寄せられ、額には脂汗が浮かんでいる。
「灰禰……?」
孤月がうっすらと瞼を上げる。澄んだ榛色の瞳が何かを探し求めるように揺れ、灰禰の面上で焦点を結んだ。
「心配するな。僕は平気だから。灰禰に泣かれる方が辛い」
そんなわけがない。
言い返したかったのに、言葉が喉で詰まり音にならなかった。
せめて泣かないように歯を食い縛る。両手を伸ばして、孤月の頭を抱えこんだ。
「そんな嘘をつかないで……」
この人をどうにかして助けたい。始まりは最悪だったのに。あまたの女に甘言を囁くくせに、灰禰にだけは辛辣で。それなのにときどき優しくて、用もないのにふらりと離れにやって来る。
絶対に死んでほしくなかった。
孤月の息遣いを確かめていたいのに、狂ったような徳造の高笑いにかき消されてしまう。振り払うように頭を振ったとき、脳内で子守唄が聞こえた。
幻聴だとわかっている。あの歌声は、もはや記憶の中にしか存在しない。
灰禰は知らず、その旋律を口ずさんでいた。少しでも、孤月の苦痛が和らぎますようにと祈りをこめて。
鳩尾の辺りが熱くなってくる。孤月との間に、今までよりもずっと確かな霊力の糸が結ばれ、胸底から生まれた大きな力が歌とともに流れ出ていくような感覚がした。
泡沫のように、姉の声が浮かび上がってくる。
——いつか灰禰に大切な人ができたとき、歌ってあげてね。
このまま力を注ぎこめば、灰禰を形作る輪郭がほどけてしまいそうだった。それでもよかった。この人が助かるなら。
「うわあああっ」
声を上げたのは徳造だった。我に返ってそちらを見ると、焼かれていたはずの尾が金色の光を放ち、鬼火を押し返している。
ばちんと激しい音がして、徳蔵は倒れた。
鬼火が消えると同時に、尾が光の粒と化して宙に散る。それはふわふわと漂ってくると、孤月の胸元に吸いこまれていった。
孤月の息が安らいでゆく。
何が起きているのかとはらはらと見守っていると、孤月がはっきりと目を開けた。
「孤月、大丈夫?」
さっきとは正反対に、今度は灰禰が声をかける。孤月は何度か瞬きすると、胸元に手を当て、灰禰と視線を合わせた。
「今……何を……」
「わからない。だけど、お姉ちゃんが助けてくれたんだと思う。それより無事?」
顔からはすっかり汗が引いていた。孤月は体を確認した後、ほのかに笑む。
「なんともない。ありがとう、灰禰のおかげだ」
「よかった……」
どっと脱力し、灰禰は孤月に寄りかかってしまった。孤月が軽々と灰禰を受け止める。頭を撫でてくる孤月の手の重みを感じながら、灰禰は問うた。
「尾はどうなっているの」
「九尾に戻ってる」
治癒よりも遥かに高度な術だ。蘇生に近い。こんな術が誰にでも使えればどう利用されるかわからない。恐らく子守唄が、術を発動する引き金だったのだろう。本当に困ったとき、大切な人だけを救えるように。
出会ったときのことを思い出す。
孤月が九尾に戻れば、囮の花嫁はお役御免。
十二年前、姉に持ち去られ、今は戻ってきた心が、引き絞られるように痛んだ。
それでも孤月の胸に手をつき、灰禰はそっと身を離す。
別れを告げようと口を開いたとき、孤月の人差し指が唇を押さえた。
「何を言おうとしているかだいたい予想がつくけど、言わせるつもりはないから」
おもむろに顔を寄せてきて、掠れた声で囁く。
「愛してる、灰禰。僕は九尾を取り戻したけれど……今度は永遠に、僕の最愛の伴侶になってくれ」
その意味が胸に届いた刹那、頷きたくてたまらなくなる体を、灰禰は全力で押し留めた。もう愛は難しくないけれど、聞きたいことがある。人差し指をそっと外し、灰禰は聞いた。
「わたしは孤月に何をすればいいの」
孤月には迷う気色もなかった。
「僕に愛されていればいい。ずっと僕のそばにいて、ときどき僕の名前を呼んで、無茶をするなら僕の目の届くところだけでやってよ」
「無茶なんかしたことない」
「灰禰は結構好き放題してるよ。そこがいいんだけど」
そうだろうか。思い当たる節がなくて灰禰は首を傾げる。
「わたしに愛してくれとは言わないの?」
孤月がかすかに肩を揺らして笑った。
「それは僕の甲斐性だから。だいたい、今、僕の腕の中でおとなしくしてくれてる時点で答えは出ていると思うよ?」
孤月の手が頬を撫でる。長い指が灰禰の髪をすくって耳にかけた。戯れるように耳朶をくすぐられ、灰禰は笑う。
「すごい自信」
「僕の自惚れ?」
唇に吐息がかかるほどに距離が近づいていた。孤月の目に映る灰禰は、ずいぶん柔らかい表情をした、どこにでもいる普通の女の子に見えた。
「ううん、本当のこと。わたしも孤月が好き」
答えると同時、優しく口づけられる。
灰禰はゆっくりと瞼を下ろし、孤月の温もりに身を任せた。



