朱籬姫の嫁入り 〜売られた花魁は、大妖狐の番として囲われる〜

 紅籬楼(こうりろう)は、もはや以前の紅籬楼(こうりろう)ではなかった。

 紅扇と珠璃(しゅり)
 花魁(おいらん)を一度に二人失い、楼主(ろうしゅ)は夜逃げした。遣り手婆も、次の晩には消えた。
 番頭新造(しんぞう)は、それよりもっと前から姿を見せていない。
 帳場には、多くの遊女を縛っていた証文と帳面だけが残された。

 珠璃(しゅり)は、それを紅扇(ねえ)さまが戻ってくるまで燃やさないことにした。
 九郎助(くろすけ)と話してそう決めたあと、最後に一度きり、花魁(おいらん)道中をしたいと願い出た。

 どこかで紅扇(ねえ)さまが見ているかもしれない。
 珠璃(しゅり)が自由になって戻っていると、知らせるために。