朱籬姫の嫁入り 〜売られた花魁は、大妖狐の番として囲われる〜

 その年の春、同じ見世の先輩新造(しんぞう)が、初めて見世張りに出されることになった。

 深朱(みあけ)は格子のずっと後ろの陰に居た。
 その(ねえ)やの後ろに流れた裾を、せめて整えようと四苦八苦していた。

 この(ねえ)やは、紅扇(ねえ)さまのような華々しい買われ方をしない。
 箱提灯を掲げ、金棒を鳴らし、長柄の傘の下を内八文字で進む花道とは、一生無縁だ。

 牢獄のように格子を張り巡らされた内へ、他の遊女と並び座らされる。

 灯りに照らされた髪。
 襟。指先。膝に置いた手の形。
 通りがかる客の目が順々に、隣の女と比較しながら検分していく。

 誰の名も呼ばれない沈黙が続く。

 どの娘も、()ず顔で比べられる。
 次に、年頃や身体付きで比べられる。
 着物で比べられ、肌で比べられ。

 世慣れた様子か。
 まだ未通娘(おぼこ)()じらいが残っているかまで値踏みされる。

 深朱(みあけ)は、この(ねえ)さまの最初のときくらい、美しく整えてやりたかった。

 せめて、隣の女に劣るなどと思われぬように。
 せめて、初めて格子越しに買われる前の一瞬だけでも。

 そうして後ろから、膝の横へ流れた裾を直してやっていた。

 直したところで、すでに二流以下扱いされている(あね)の、何が変わるわけでもない。
 けれど、誰にも見直されもしないまま無造作に、男たちの目へ差し出されるのが、どうしても(いや)だった。