君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

 あれから大学生になった俺は文学について学び、勉強とバイトの合間を縫って執筆活動を始めた。
 未来に散々ダメ出ししてたくせに、自分といえばすっかり腕は鈍り、初心者レベルに戻ってしまっていた。
 彼女に教えた時と同様に、俺も短編から練習を始め、調子が戻ってきたところで中編や長編にも挑戦した。
 しかし中学生の頃に持ち合わせていた、尖りと煌めきは褪せており、残っていたのは臆病な自分だけ。
 それも武器になればと大学二年の冬。ずっと書きたかった未来の人生を綴った。

 書き始めての自己評価としては、悪くないと思っていた。
 あいつの人生を物語として落とし込めているし、聞いていた心情もしっかり書いたつもりだった。これを未来の母親に見せられる自信すらあった。
 ……ただ、この物語は未完成で、ある場面で止まっている。クライマックスの、主人公が生涯を終える場面だ。
 あいつが小説を書き、学校生活を満喫している場面なんかいくらでも書けるが、どんどんと弱っていき、呼吸が止まった場面なんて書けるわけないだろう。
 未来の死を書くなんて。

 それが出来なかった、大学四年の冬。
 就職を理由に、二度目の断筆をしてしまった。
 俺が完結させなければ未来は物語の中で生き続ける。そんな思いで。

 窓から見えるのは降り続ける雪で、あの年もそうだったなと目を逸らした俺は、あえて本棚に目をやる。
 そこには国語総合やら古典やらの教材が敷き詰められてあり、教科書を手にとってペラペラと捲っては、さあ期末テストはどこを出題するかと考えることにより不安を回避していた。

 元・素行不良生徒が、高校教師になる。そんな物語みたいなことをやった俺は、就職前に集まった地元メンバーグループで、「藤城も冗談上手くなったな」と、笑われた。
 相談に乗ってくれていたもう一人の親友、大輝だけは「直樹くんに向いてると思うよねー」と拍手してくれて、ようやく全員に信じてもらえたという、笑えないオチまでついてきた。
 そう言うアイツは医者になり、元々より医者を目指していたらしいけど、癌専門医になったということは、そうゆうことなんだろうな。
 
 自分が教師になって分かる、あの頃の青さ。
 常に何かに苛ついて、癇に障って、傷付かないように牽制を張る。
 そうしないと、自分を保つことなんて出来なかったから。