君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

「内藤」
「ん? 何ー?」
 向けられたスマホカメラに目を向けたままのコイツは、いつもと同じく軽い返答してくる。

「お前は何で、小説の主人公みたいなんだ?」
「……へっ? 何言ってんの!?」
 シャッター音と内藤が俺の方に向いたタイミングがピッタリと合ってしまい、「悪りぃ」と一言呟く。

 写真を撮り終わり、盛り上がる連中から少し離れ、ボソボソと二人きりの会話をする。

「お前は見た目も良いし、コミュ力も高い。その上性格まで良かったら、無敵だろ? なのに、どうしてあいつは……」
 未来はコイツを、選ばなかったのだろうか?

「あ……、言いたいこと分かったよ。未来ちゃんが小説の後書きで藤城くんに遺したメッセージのこと?」
「え、気付いてた……のか?」
「一年生の文化祭前日。未来ちゃん、せっせと買い物メモみたいなの書いてさ。俺は意味分かんなかったけど藤城くんは理解して、未来ちゃんの元に行って。あー、なるほど、縦読みかー。藤城くんは未来ちゃんの考え分かるんだー。負けたな……みたいな。その法則であの文面読んだら、まあ……、ね」

 ははっと笑って見せた内藤は目を細め、広がる青空をただ見上げている。
 その瞳はあまりにも澄んでいて、穢れなど一切ない。

「……お前、よく俺と普通に接してたな? 苛ついたりしねーの?」
「え? 別に藤城くんが悪いわけじゃないし、俺に振り向かせる魅力? みたいなのがなかっただけだよ」

 キョトンという表現が似合うぐらいに不思議そうな表情を浮かべた内藤は、やはり小説の主人公ばりに良い男だった。

「友達になってくんねーか?」
 それを言葉にした途端に、ブワッと熱くなる全身。改めて「友達になってくれ」なんて口に出したこともなく、そして何よりクラスの素行不良に言われたらドン引きだろう。

「……え?」
 ほら見ろ、眉を下げて怪訝な表情浮かべてるだろ? こいつに、そんなつもりは……。

「えっと、俺は友達だと思ってたけど?」
 あっけらかんと臭いセリフを吐けるこいつには、男として一生叶わねーなマジで。


 一人の女性に心掻き乱されちまった者同士で空を見上げれば、どこまでも広がる青色に白い雲。柔らかな日が差し込んでくる。
 その温かさが、新たな人生を生きていくことになる俺達をあいつが見守っているようで、俺達を照らているようで。何だか遠くにいる存在と思えないほどの、親近感を抱いてしまう。

 ……未来、俺は「お前が綴った物語の俺」に負けたくない。
 お前はエピローグで十年後の俺を想像して書いていたが、もっと越えてやるよ。
 そんな未来像、想像出来なかったー! と騒ぐぐらいにな。

 いつか必ずお前を越すから、待っててくれよ。
 俺が、未来の小説を書き上げるその日を。