君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

 卒業式が終わり、校舎をバッグに写真を撮るクラスの奴ら。
 未来の友人だった女子二人と母親が共に写真を撮り、顔を見合わせて口を動かしている。すると徐々に、あいつの母親を囲む生徒は増えていき、同様のことが繰り返されていく光景が目に入る。
 ……クラスの人気者だったもんな。

 未来の遺影と撮影をする同級生達の姿に、どうしてあいつだけこの晴れ舞台に立てなかったのかという、どうしようもない考えが頭の中を駆け巡る。

「藤城くんも、一緒に行こうよ?」
 脳内でうごめていた黒いものを一瞬で跳ね除けてくれたのは、どこまでも優しい主人公声。
 爽やか一軍男子、内藤だ。

 俺の返事も聞かねぇ、まさしく主人公なキラキラ男子は、俺の手を無理矢理掴んで引っ張って行きやがる。
 今までの俺ならマジギレして、「余計なことすんな!」と怒鳴り散らすが、こいつのお節介がやたら温かくて、嫌味がなさすぎて、ついつい聞いてしまうあたり未来と同じ素質なんだろな。

「あ、藤城くん」
 俺に目を向け慈悲深い表情を浮かべる未来の母親は、「文学部、受かったんだってね」と手を叩いて笑ってくれ、未来の写真に「良かったね」と語りかけている。
 未来が目指していた国公立の大学。お前の成績なら特待生を狙えただろうが、俺にはムリだったよ。
 そう写真に向かって、苦笑いを浮かべちまう。

「……持ってあげてくれる?」
 未来の母親より渡された、あいつの遺影。
 そんな重くないはずなのに、それはやたらズッシリときて。命の重みかなんか分からねーが、こいつの息遣いが聞こえたような気がした。

「俺に、未来さんの話を書かせてください」
 遺影を返す時にそう告げ、頭を深々と下げた。
 何年かかるか分からねぇ。だけど書きたいんだ。強く生きた、彼女の物語を。

「……一つ、条件があるけど良いかな?」
 柔らかい中にどこか芯があるような声に、俺は顔をそっと上げる。

「未来を越えてね、藤城くん」

 こちらを見据える目は、あの日、桜の並木道で執筆のやり方を教えてくださいと頭を下げてきた未来と同じ眼差しだった。

「はい」
 唇を噛み、その言葉を心に刻み、一呼吸置いて返答をする。

 西条寺 華。彼女の実力は高く、公募で大賞に輝いた選評は、プロが手放しに絶賛するものだった。書籍の売り上げも、評判も良く、次回作を期待しているなどのコメントも目にするほどに。

 そんな彼女を越すなんて並大抵なことではないだろうが、やってやるよ。
 だってあいつ、百年後に俺が来るのを待ってるらしいから、その時に駄作ばかり持ってたら、みっともねーだろ?
 やっぱり、コイツすげーな。そう思わせたいから。