君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

 苦しくなったら机に突っ伏して眠り、目が覚めれば痛ぇ目をガン無視してひたすらに思い出を書き記し、父さんが持ってきた食事を詰め込んで、また書いて、寝る。

 日暮れを三回ぐらい見届けたところで、全てを書き終わった。
 内容はいわゆる後日記みたいなもので、思い出がビッシリ詰まっている。
 部屋の窓より空を見上げれば真冬の星がキラキラと光り、一つの線が一瞬見えたかと思えば消えていく。

「なっ、流れ星!」
 前にもこんなことがあったと横に目をやるが、あの時共に声を上げた彼女はおらず、また胸を抉られたような痛みが襲ってくる。

 あの日は確か、文化祭の前日だった。
 日暮れに呼び出されて、桜の並木道に行ったら一人で居やがって、危ないだろってキレたな。  
 ……そう言えばあん時、何であそこに行ったんだっけ? 
 メッセージアプリを辿っていくが残っていたのは文化祭日の着信で、俺の居場所を探すのにあいつが使ったものだと思い返すと、なんかまた胸が苦しくなっちまう。

 違うだろ、今は文化祭前日のことを思い出して……。
「あっ」と声が出た俺は、机の引き出しに入れておいた一枚の紙切れを取り出す。
 それは一見すると、買い物メモのような箇条書きのメモだった。

 そうだった、これで呼び出されたんだった。
 あいつが小説の展開として、よく出す手法。まあ、ありきたりだが、ここぞという時に出してきて、悪くないんだよな。
 ……ただ、不自然な文章になるから仕込んでいると分かりやすい。だからそれが、次の課題だと話してたな……。

 目を閉じれば、未来が遺した小説の内容が脳内より溢れてくる。ムダな描写や文章は一切なかったなと、あいつの筆力には一生敵わねーなと小さく息を吐く。

 ……いや、あった。一つだけ、やたら不自然な文章が!
 俺のことを「(きみ)」と書いたり、「あなた」と書いたり、こんな間違いするかって……。
 目をパチリと開けた俺は、未来の単行本をパラパラと捲りそのページに辿り着く。
 この物語の主人公である、俺に宛てたメッセージのページへと。

「……嘘だろ。どうして、だよ……」
 何度見直してもそうとしか読めず、文字が歪んでいく。
 俺がこのメッセージを読んでる時、やたら目をキョロキョロさせていたけど、そうゆうことだったのかよ。
 言えよ……。俺のことニブイって、散々からかってただろ? だから、言ってくれよ。

「未来……」
 星が光る空下。未来が居なくなって初めて、俺は声を上げて咽び泣いた。