君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

 気付けば俺は何とも言えない感情に走り出すが、あのうさぎのスタンプみたいに汗をかきながら走る姿がシンクロしちまって、どうにも笑えてくる。
 家に着いた俺は、確かメールには既読機能とかねーよかとか考えながら開く。

 一文字すらも取りこぼしがないようにと熟読して、終わっては最初に戻っていて、三十分後にはメッセージアプリを開いて返事を打ち込んでいた。
 返事は明日。そっけなく、ダルそうに。
 最初に自分に課した誓いなんかとっくに忘れて、衝動のまま。

 総評としては確実に良くなっている。
 テーマを親子愛一本に絞ったことにより、主人公が母親から自立出来ない理由や心情、自分の思った通りに行動を起こす成長、母親と向き合い同時に自分自身とも向き合う主人公の考えとかを上手くまとまってんな。
 長編になると軸が増えて、いつの間にか話がとっ散らかってしまう。だから、次は3万文字程度の短編を……。

 いや、問題はそこじゃねぇ。
 そう思った俺は打ち込んだ長ったらしい文章をスルーして、通話ボタンをタップする。
 なんであいつの執筆に対する熱量を疑っちゃまったんだよ?
 あいつな遊び呆けていたり、執筆訓練がめんどーで遅れていたわけじゃねぇ。
 その理由は、おそらく。

「執筆記録、書いてんだろ? 見せろ」
 電話が通じた瞬間に、「もしもし」とかいうつまらねー挨拶も、渡してきた作品の感想や意見でもなく、一方的に要件を告げてしまう。
 執筆のことになると一気にテンションが上がって先ばっちまうし、ペラペラ喋って相手ドン引きだろうし、いきなり過ぎんよな?
 本当、人間そんな簡単に性格は変わらねーってことかよ。

『え、えーと』
 ほら、見ろ。やっべー奴だと思われたじゃねーか。

『ちょっと、待ってくれる』
 一旦電話切るね、とわざわざことわってきたこいつから送られてきた画像を見て、一気に顔面が熱くなるのを感じていく。
 ゆるいうさぎの絵が描かれた四月五月のカレンダーは紙をカメラで撮ったもので、今時まだ紙の手帳を使ってんのもこいつらしいと感じる。
 ところどころスタンプが押されていて、何くだらねぇ加工してんだと思ったが、おそらくそこにはリアルのスケジュールが書き込まれていたのだろう。
 ぬ、ぬかった! 俺とかアイツの手帳は執筆記録しかなくて、友達とのプライベートなんて皆無だった。
 おい、やべーぞ! これじゃあ俺、女子のプライベートを知りたがってる危ない奴だと思われるじゃねーかよ!