君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

 通学路の途中。二月中旬の空気は冷たく、風が吹く度に棘が刺さるような痛みが襲ってきやがる。
 しかしそれ以上に痛ぇのは、ギャアギャアと話して笑う、女子共の声だった。
 靴箱の場所が違うことから別学年だと分かるし、未来の葬式から一週間は過ぎてる。
 ずっと俯いて過ごせなんて言う気はねぇし、故人と会ったこともねー奴らに、あいつの死を嘆けよと文句言う気も当然ない。
 ……だが、なんか虚しくて仕方がねぇな。
 一人の死が、こんな簡単に通り過ぎていくことなんてな。

 ガラララ。
 どれだけ音を立てないように気を張っても、摩擦というものはどうしようもない。暖房効果を維持する為に閉ざされていた教室のドアを開けると、音が響いちまう。
 それによりこっちに目を向けてくる奴らの視線も、どうしようもないっていうのか?
 
 未来の葬儀が執り行われた時、関わりがなかったはずの俺があいつの棺に本を添えた。
 まあ、異様な光景だったよな。どんな関係だったのか……とか。
 別に執筆を教えていたとか、過去に小説書いてたとか。そんなこと、どーでもいいし。
 もう、勝手に笑いやがれよ……。

「藤城くん」
 枯れた声に、机に突っ伏していた顔を上げると、そこにいたのは内藤。
 目が充血し、鼻まで赤いその姿から、未来の葬儀時に声を上げて泣いていたことを思い出した。

「大丈夫? ムリしてない?」
 いやいや、大丈夫じゃねーのはお前もだろう?
 そう返そうと口を開くが、視界に入ってきたのはセーラー服姿の女子だった。
 伸びた髪は背中までのストレートで、俺は立ち上がってその女子の肩を掴んでいた。

「っ!」
 振り返った女子は明らかに表情を引き攣らせ、体を硬直させていた。

「あっ……」
 想定していた顔とは違い、反応まで異なる。
 どうしていいのか分からなくなった俺は、手を退けることも、「悪い」と口にすることもなく、ただ呆然としちまった。

「ごめん、ごめん! 何でもないから!」
 俺の手を引き、席に戻してくれたこいつは、俯き黙り込む俺の側にただ立ち尽くしていた。

「……気付いていたと思うけどさ、俺も吉永さんのこと、……好きで。だから今でも、辛くて……」
 俺の耳元でボソッと呟く声は震えていて、小さく鼻を啜る音が聞こえた。
 こいつの想いは本物で、まだ立ち直れていなくて、でも俺のことを本気で気に掛けていて。
 だからこそ、俺は教室より飛び出していた。