君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

「……ふぅ」
 小さな溜息と共に、こいつの体が脱力していく。
「おい!」
 どうやら人間というのはただ座るだけでも体力がいるらしく、力をなくすと体がズリ落ちていくらしい。
 横に居た俺は手を伸ばして体を支えたことにより倒れることはなかったが、その体は明らかに軽く骨ばった体をしていた。

 ドクンと鳴る心臓。
 痩せたとは思っていたが、ここまでだったとは。こいつは嫌がっていたが、致し方ない。

「帰るぞ」
 こいつが座っている車椅子、いやリクライニング式の車椅子の頭を倒してこいつの体を保たれさす。

「ごめんね……」
 弱った声が、波音により消えていく。

 今回の外出で許可が下りたのは普通の車椅子に乗ってでの移動ではなく、リクライニングと言われる頭を下げられるタイプの車椅子だった。
 途中で座っていられなくなったら、頭のシートを下げてこいつを体を保たれさせて帰ってきて欲しい。
 そう看護師より説明を受けていた。
 つまりそれほど、こいつの体は限界に近いということだろう。

 息遣いは荒く、閉じる目は弱く、体は脱力し切っていて、車輪がガタガタと揺れる度に軽い体は力無く動いてしまう。

 こいつの体は春に桜を見に行った時と、明らかに状態が変わってきている。一度は生死の境を彷徨い戻ってくることは出来だが、そのキッカケとなってしまった治療は急変の可能性があるからと中止となった。
 だからこいつは今、緩和医療を中心としたホスピスに居る。もう病気と闘い苦しむことはない。逆を言えばこいつの体は、これから癌に侵されていく。
 だからこそ、この外出許可が降りたのだろう。体力が残っている間にと、最後の希望を聞いてやったのだろう。

「……ありがとう」
 薄っすら開けた瞳は空をとらえており、また小さな溜息と共に体を脱力させてしまう。

 空は茜色の夕陽色に染まり、日暮れが早まったのだと俺達に知らせてくる。

 あと何回、この美しい夕日を眺められるのだろうか?
 時間は一刻、一刻と迫っていた。