「遅くなりました」
「ありがとう、こっちなの」
案内されたのはいつもの病室ではなく、病棟詰所内にある病室。
ドクンと心臓が嫌な音を鳴らす。
そこは母親が亡くなった病室だった。
患者の対応が取れるようにと病院側で用意されてある、急患部屋。つまりそれだけ、予断を許さない状況ということだ。
『面会謝絶』
ドアにそう張り出されているが、俺はこいつの母親の後に付いていき部屋に通してもらう。身内の許可があれば面会ができ、こいつの母親は俺をその相手として許してくれた。
その事実に感謝し、閉ざされていたプライベートカーテンが開かれた先を俺は見つめる。
ピッ、ピッ、ピッ。
こいつのベッドを囲むように心電図モニターや点滴スタンドが配置されている。
中央にはベッドで眠る、こいつの姿。
力無く目を閉じ、体を一切動かさず、口元には管みたいなものを入れられ、それにより息をしている。想定していたよりも明らかに状態は悪く、目の前に映し出される視界がグラグラと揺れて見える。
「おい、どうしてしまったんだよ? おい!」
肩を揺さぶるが、反応は一切返ってこなかった。
「嘘だろ、言ってたよな? 治療は辛いけど、生きて結果を見届けるんだと。一次落選でも構わない、それが結果だって。まだ結果出てないだろ? まだ終わってないんだよ! おい!」
どれほど声をかけてもこいつは反応を示さなったが、一つ自分の意思を表すことが起きた。
目から一粒の涙が、スッと耳元まで伝っていた。無念だと、吉永未来の心が叫んでいるようなそんな涙が。



