君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一

「はぁ、はぁ、はぁ」
 雨が降る中、俺はひたすらに走る。
 ふざけんなよ、そんなこと許すわけねーだろ。
 そんな思いを抱えて、ひたすら。

 病院に辿り着いた俺は所々濡れており、傘をしっかり差せていなかったことにようやく気付く。   
 唯一脱ぐことが出来る学ランを脱ぎ、学生カバンに放り投げる。
 衣替えの移行期間で良かった。しかし、髪もズボンも、カバンも濡れており敷地内に入って良いわけない。しかし逸る気持ちも抑えられず、俺は可能な限り水滴を落とし敷地内に入っていく。


「藤城くん」
 病棟に着くと対面する、あいつの母親。
 元々痩せていた人だったがより痩せ細っており、今の状況は火を見るより明らかだった。

「あいつは……。み、未来さんは」
「ちょっと待ってて」
 どこかに行き、戻ってきたかと思えば渡されたのはタオル。桃色であり、おそらくあいつの入院で使用しているタオルだろう。

「風邪引いちゃうから」
「あ、すみません……」
 俺は、濡れた髪や首や手に付いていた水滴を拭く。それにより、ようやく気付く。体が冷えていたと。

「未来に……、会ってあげてくれないかな?」
 俯き肩を震わせ、そう頭を下げてくるこいつの母親。
 電話で告げられた内容は、ここ数日意識が戻らず最悪の場合このまま息を引き取る可能性があるとのことだった。
 今聞いた話によると、抗癌剤治療を受けたあいつは発熱と嘔吐に体力を削られ、逆にそれがあいつの生命を脅かしているとのことだった。
 そんなに深刻な状況だったのか。
 何も知らなかった俺は、ただ脱力してしまった。

「二時間、時間をください。戻ってきます」
「ありがとう。待ってるから」
 俺は速攻で自宅に戻り、シャワーを頭から被る。あいつは今、命を賭けて戦っているというのに俺が菌を持ち込むわけにはいかねー。
 体を綺麗にしながら、震える体を必死に温める。
 大丈夫だ、大丈夫。あいつのことだから、ちょっと具合悪かっただけーと後で笑い話にしてくるに決まってるからよ。
 大丈夫だ。まだ一次選考の結果も出てないし、そんな結果も知らずにそんなわけ。
 清潔な服に着替えて、しっかり傘を差してあいつが待つ病院に向かう。
 雨は変わらず、降り続けていた。