君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一


 日が暮れる頃。病院から帰ってきた俺を待っていたのは、閉じ方が変わっていた家の外門だった。
 それを察した瞬間、俺の心拍数は一気に上がり、真冬なのに変な冷や汗が流れ出てくる。
 泥棒が侵入したとか、そんなブッソウな話ではない。話は単純、この家主が帰宅しただけのことだ。

 あまり帰ってこない父親。
 俺がバイトに行っている間に、金だけ置いとく父親。
 話をするのは進路のことぐらいで、最後に話したのは高校進学する時の三者面談。俺が遠くの県立高校に通いたいと言うのに対し、何も聞かずに「分かった」とだけ口にした。
 その時に察した。ああ、やはりこの人は一人息子に興味がないんだと。
 だから俺は、ますます父を避けるようになった。
 あの人が家にいる時は、外で時間を潰す。
 夜に帰ってきた時は、二階の自室に籠る。幸いこの家には二階にもトイレがあり、下に降りる理由なんかねーし。
 それを察しているのか、あの人はこの家で寝たりとか皆無だしな。

 高校を卒業したら就職して、こんな息苦しい家出て行ってやる。
 ガキの頃よりずっと思っていた。
 そのためにバイトして金稼いで、少しでも金になる会社に就職する。
 やりたいことも、人生の目標もくだらねー。そう思いこれからの人生も、堕落した生き方をしてやろうと思っていた。
 ……だけどよ。
 いつもの俺なら父親の気配に家を後にするが、カチャンと外門を開けた。

 心臓の音がうるせぇ。
 父親に対面するだけなのに、こんなに身構えてバカみたいだな俺。
 ガチャと開く玄関ドア。靴を脱ぎ、わざと足音を立てて灯りの付いてあるリビングへと向かう。
 そして重いリビングドアをそっと開けた。

 その音に振り返るのはグレーのスーツにネクタイをしっかり締め、背筋がしっかり伸びてある父の姿。目元のシワが増え、背の差はいつの間にかなくなり、頭部は白髪が増えていた。

「……直樹」
 二年振りに親子が対面すると言うのに、互いに何も口にしねぇ。
 元気か? 今どうしてる?
 そんな近況を聞くことも。

「……あの。話があります」
 だからこそ、俺が歩み寄っていく。
 未来への入り口を開けるために。