君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一


「あ、私、もう決めてあるから」
 俺の提案を聞くまでもなく差し出してきたスマホには、聞き馴染みのある青春文学賞名が載っていて、締切は四月末だった。
 こいつはこの出版社が好きで、作品全て集めてると言っても過言じゃねーくらいには買い揃えていて、明らかに作風の影響も受けてるぽいっけどよ、ここは応募数千は超える人気レーベル。
 ここの大賞で三次選考までいってるが、その後の最終選考に残れず苦い思いをしている。
 プロ作家も応募してるほどの、実力者揃いの小説大賞だからな。

 あと三ヶ月。これから構想を練るとして、間に合うか?
 募集は半年に一度。十月締切の方にするように話すが、時間的に追い詰められないと書けないからと聞かねぇ。
 まあな、こいつは時間制限ないと文体にこだわってしまうというクセもあるし、言ってることも一理あんだよな。

「分ぁったよ」
 執筆スタイルは個々によって違う。だから聞いてやることにした。
 決して、こいつのキラキラ攻撃に屈したわけじゃねーし。


「んで、何か書きてぇ話とかあんのか?」
 冬休み最後の日。朝っぱらから病室に押し掛けた俺は、前回渋って言わなかった本音を探る。
 何だよ、そんなに言いにくい内容なのかよ?

「……直樹くんにお願いしたいことがあるんだけど……」
「あ? 前置きとかいーから、さっさと言えよ」

 どこまでも悪態をつき、ホントにどうしようもねーな俺。
 彼女が綴る作品。それこそ寿命を削って書く最後の物語。
 だから俺は何でもする。何でも。
 そんな本音が言えたらいいのによ、まったく。

「私ね、直樹くんの話が書きたいの」
「俺ぇっ!」

 はあ? よりによって、俺かよ? おいおいおい、そんな作品ヤッベェぞ!
 想定外過ぎる申し出に、不良高校生の悪態全集しか思いつかなかった。

「うん。あなたがどうして小説を書き始めたのか。達也さんとのこと、そしてこれからの人生を書きたい。それが私の最後に書きたい物語なの」
「俺なんかつまんねぇ人生論しかねーし、いや、0次選考落ちだ! ぜったいにやめろ!」
「そんなことないよ! つまらない人生なんてない! ……だからさ、どんな人生を歩んできたのか教えてくれない? 私は、あなたについて知りたいの」

 その真っ直ぐな瞳に、次の言葉が引っ込んでいく。
 なんなよ、こいつには何でも話したくなるんだよな。
 達也とのことを話したのもそうだったが、ホントに不思議な奴だ。
 こいつには何でも話せる。いや、聞いて欲しい。そう、思わせてくれた。