君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一


 その内容は二人の男子中学生が小説を書いており、受賞を目指して奮闘する物語。二人は執筆のことを誰にも言わないと約束していていたが、その片方がそれをクラス中に言いふらしてしまい、もう一人は友人に裏切られたと筆を折ってしまう。そんな話だった。

 まさか。
 震える指でタップすると、二人の男子中学生が南紀白浜の浜辺で夕陽を見ながら小説執筆について語らう場面から始まり。互いに読み合い、アドバイスをして、時にはぶつかることもあったが、毎日がキラキラと輝き、相手を尊重し、信頼し合っていた。
 そんな二人は書籍化を目指して公募に挑戦するが、友人は結果を出せず己の才能を疑い筆を折ってしまう。
 親友の分も夢を叶えようと奮闘するが、親友に裏切られてしまった主人公は、二人の秘密である小説執筆についてクラス中に暴露してしまう。
 信じていた親友に秘密を暴露された絶望。その時に言い放たれた言葉。
 シチュエーションは違うが、その書き綴られた心情は俺そのものだった。

 そして、この物語にはもう一人主人公がいた。
 裏切った友人側の目線。その内容は。
 はっ? んわけ、あるかよ! ふざけんな、アイツが俺を? テキトーなこと書くなよ!
 思わず、スマホをぶん投げそうだった。
 文章で分かる、あいつだ。何も知らねーくせに、勝手なことばっか書きやがって!

 謝りたい気持ちなんか潮風に流された吐息のように一瞬で消え去り、スマホを握る手に力が入る。
 文句の一つでも言わねーと腹の虫が治らないと力強くタップしていくが、コメント欄は閉じてあり連絡を取る手段がねぇ。
 どんな筆名でこんなふざけた話を公開してんだと作者欄に目をやると、名前は西城寺(にしじょうでら) (はな)とうう、知り合いにはいねーが間接的に知っているような文字列で、さっきも見たと青春文学賞の選考欄を過去に遡って見ていくと、三次通過一つ、二次通過二つ、一次通過二つと結果を残していた。

「あいつ、いつも一次落ちだって言っていたのに」
 やっぱりな。あれほどの文才があるのに、一次すら通らないなんておかしいと思っていたんだ!
 久しぶり過ぎるSNSを開くと見知った名前がいくつもあり、書籍化が決まっただの、二冊目三冊目とかの報告に溢れていて俺の心に刃が突き刺さるような痛みが走る。
 ……んなこと、今どーでもいいんだよ。
 頭を掻きむしり、検索名を打ち込むと、同姓同名の登録者は複数あり、一つ一つプロフィール欄を確認していく。
 すると、うさぎのぬいぐるみがアカウントになっているのが目に入り、思わず「これだ!」と声に出ていた。
 読書が好きです、という一文のみがプロフィールに書き込まれたアカウントは今年の九月より開設されたようだ。
 投稿内容は読んで感動した本の書き込みに、同じ窓からの風景と共に投稿された140文字の文章。その内容は、写っている木から散っていく葉のことばかり。
 その文章があまりにも詩的で、己の運命と重ねているようで、読んでいくうちに涙腺が緩んできやがる。
 やはりこの文章はあいつのもので、この写真も……。

 俺はこの景色をよく見下ろしていた。
 物心つく頃からあの人に連れられて通っていた、あの場所。
 だから、ここがどこかを知っている。
 なんでだよ。お前どうして、ここにいるんだよ?