朝からの鬱陶しい雨はいつの間にか止み、傘を片手に俺は帰路に着く。
いつもの並木道をノソノソと歩き空を見上げれば、広がる青空に光る虹。
周辺を歩く中学生共が綺麗だと騒ぎ、スマホを向けていやがる。
『キラキラと輝く七色の虹を眺め、ふっと横に目をやるとそこには満面の笑み浮かべた君。空に輝くそれよりも美しいものがあるのだと、俺は初めて知った』
不意に浮かんだその文面に横に目をやるが、華が舞うような笑顔はそこにない。
虹は、こんなに色がないものだったか?
もっと美しく、色鮮やかで、見るものを魅了させてくるものじゃなかったか?
他の通行人は「こんなくっきりしているのは珍しい」、「色がはっきり見えて綺麗だと言っているが」、俺には全然そうは見えねぇ。
目、おかしくなっちまったのか?
空を見上げてどれぐらいの時間が過ぎたのか、虹は消え去り空に浮かぶのは白い入道雲。それらも風に流されていき、跡形もなく消えてゆく。
気付けば空は茜色に変わっていたが、まだその場に立ち尽くしていた。
あいつが来てくれる訳ない。分かっていたが、この場を離れることが出来なかった。
日没を迎え、周辺が薄暗くなってきた。
そこでようやく手にしたのが、スマホだった。迷惑だと分かっていたが、一度だけ電話をかけてみる。
ずっと鳴る呼び出し音。以前送ったメッセージが未だに未読表示されていることから、一つの現実を受け入れる。
俺はブロックされるほど嫌われた。その現実を。
ようやく足が動いてくれ歩いて行くと、そこは夜にも関わらず明かりの一つもない自宅。鍵を開けてで家に入ると、ガランとした殺風景なリビングで俺の帰りを待っているのなんて誰もいない。
そうだよな。
暑い中に長時間居たせいか、頭が割れそうに痛く口の中はカラカラ。水分を摂らないといけないと分かっているが、俺はソファに体を預け、ただ目を閉じる。
別に良いだろう? 前に戻っただけ。俺は一人で生きていくと決めた。今更、何を感じるってんだ?



