君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一


『俺には無理だったんだよぉ……。だから直樹だけでも書いてくれ……』

 あれは中学一年の初夏だった。
 かつての親友が己には文才がないと自身を追い詰め、筆を折った。
 俺はなんとかしたいと休ませたり、公募とか考えずに気楽に書けばいーじゃねーかとか、下手な説得を続けたがダメだった。
 執筆は本人次第であり、他人がとやかく言ってなんとかなるものじゃねーからな。
 だから俺はアイツの分も書くと決め、寝る間も惜しんで、一文一文に本気で向き合っていった。
 そんな中、アイツは俺の作品を読んでアドバイスをくれるようになった。
 それがあまりにも的確で、正直胸に刺さることもあったが、それを元に書いていけば、まさかの三次選考まで突破出来て、アイツも一緒に「あったぁ!」と声を上げてくれたな。
 別の形となったが良き親友として今後も関わっていけると思っていた。
 しかしそれは、独りよがりの願望だった。

 あれはアイツが筆を折って一年が経った、中学二年の夏休み前だった。
 中学でも陰キャだった俺は、とにかく平凡な三年間を過ごすと決めていて、教室では物音一つすら気をつける、クラスに一人は居そうな突然消えても誰も気に留めないような存在だった。
 だが、その日に限って、クラスの奴は俺を見てニヤニヤ笑い、「ないわぁ」と気持ち悪りぃものを見る目で、俺を凝視してきた。

『藤城、お前ってなかなか痛い奴だったんだなぁ』

 耳元で囁かれた言葉に顔を上げると、これみよがしに見せられたのは一冊の大学ノートだった。
 これって。
 その時、人間は秘密を知られたと悟った瞬間、暴挙に出るのだと知った。
 無理矢理ノートを取り返そうとして、机ごと転けて、ダセェのなんのって。
 教室中から感じる視線は、体の痛みなんか忘れるぐらいに、俺の心を刺してきやがる。

 なんでクラスの一軍みたいな奴が、俺のノート持ってんだよ?
 返せよ、これはお前らに関係ねーことだろ?
 いつもクラスの透明人間みたいな、背景の一部みたいな扱いしてんじゃねーかよ。
 こんな時ばっか、ここにいる存在として扱うんじゃねぇよ!

 なあ、達也。
 これ、お前に預けていたよな?
 落としたのかよ? 本当にしょうがねー奴だな。
 許してやるから、今すぐ取り返してくれよ。頼む、取り返す行動を取ってくれ。
 じゃねーと、わざと見せたんだと親友を疑ってしまうだろう?