君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一


「藤城くん、発見っ!」
 無邪気な笑顔と共に現れたこいつと、その手には二つのクレープが握られていた。

「なっ、なんだよ!」
 突然現れたこいつに、俺の声は吃ってしまう。
 怒れ、威張れ。
 頭の中で必死に命令を続けるが、俺の口はモゴモゴとし一切役に立たねぇー。

「クレープ、一緒に食べよー!」
「はあ?」
 これ見よがしと両手にクレープを握っているのに、間抜けな声が出る。
 まさか、ホントに俺にと持ってきてくれたなんて思うワケねーだろ?

「文化祭に出席した人は食べていいんだよ」
「俺はしてねーし!」
「先生に、藤城くんは来ましたって言っておいたよ!」
「勝手なことすんなよっ!」
 へへっと笑う姿は無邪気に溢れ、俺の前以外では見せないで欲しいという、ヤベェー考えが過ぎる。
 なんなんだ、こいつはホントーになんなんだよ!
 狙ったかのように来やがって、やってほしいこととか並べやがって、大体なんで俺のサボり場を……!

 ニコッと笑いかけるこいつに、何とも言えねー、後ろめたさ感が溢れてやがる。
 何だ、何を隠してやがる?

 ……ん、待てよ。さっき電話が鳴ってたよな? 結局、相手を確認してねーけど、まさか。
 クレープなんかガン無視して、スマホを操作すると最後の着信履歴に残っていた名は、吉永未来。
 つまり、こいつ。ってことは。

「着信音を居場所特定に使いやがったなぁー!」
「あ、バレたぁ? だって、旧校舎広いもーん」
「何で分かるんだよ?」
「だって教室覗いたかと思えば、すぐどっか行っちゃうんだもん。藤城くんはよく旧校舎前でお昼ご飯食べてるから」
「なっ!」
 俺がこいつを覗き見していたと知られた瞬間に、頭の中が沸騰する。
 やべぇ俺、やばい奴じゃねーか。
 それを悟った瞬間にスッと立ち上がり、こいつに背を向ける。

「待って! 私ね、さっきの藤城の顔を見て分かったの!」
「……何がだよ?」
 尖った声を出し無理矢理牽制するが、俺の心臓はうるせーぐらいに音を鳴らす。
 まさか、こいつ。

「藤城くんが……」
 おい、言うなよ! マジでやめてくれよ!
 自分の声を被せてこいつの口を閉ざしたいが、情けねーぐらいに俺の唇が震え声を出すことができねー。
 だからこそ俺は、唯一動く目を強く閉じることしか出来なかった。