それにより。こいつとツルんでいる女子二人、男子三人との計七人の買い出しグループが出来た。
別にそんなのいらねーのに、余計なことしやがって。
そう思ってるとロングホームルームは終わるが、どうにも休み時間の教室内は居心地の悪く、いつもの場所で時間を潰そうと階段に向かって廊下を歩いていく。
「藤城くんって怖くない?」
「未来、関わらない方が良いよー」
下りの階段に用事があるってゆうのによ、屋上に続く階段の方から奴らの声がボソボソと聞こえてくる。
あいつと女子共だ。
まあ言い分は、至極当然。
俺は何でもねーフリをして下りの階段に足を下ろすと、一つの言葉が落ちてきた。
「え~、全然そんな人じゃないよー」
あいつの戯けた声に俺は思わず足を止め、通行のジャマと思われねーように端に身を寄せていく。
「本当にぃ?」
「うん。こないださぁ、たまたま外で会ったんだけど。急に具合悪くなっちゃってしゃがみ込んでたら、ベンチまで連れて行ってくれて、座らせてくれたんだよね。あれ、優しい人じゃない? みたいなぁー」
ノリよく、俺との関係を悟られないようにフェイクを挟みながら話しているこいつ。
誰に対してもこれぐらいのフォローをするバカ親切な奴だと分かってるが、それに対して俺の胸が熱くなっていく。
やべえ、こんな顔誰かに見られた日には……。
ダルそうに俯いて頭を掻き、手で顔が見えないようにと気を張っていると、その声が聞こえてきた。
「え、また具合悪くなったの?」
「確か、中学からだよねぇ? マジで、そろそろ病院行った方が良いんじゃないのー? お母さんに、ちゃんと話してる?」
中学から具合が悪い?
その話に、悪趣味だと分かっているが俺は女子の会話を聞き続けてしまっていた。
「あ……、いや、あの日は暑さのせいでさー。ありがとう、気遣ってくれて」
「もー、未来は気ぃ使い過ぎー! 家のこともやってんでしょー?」
「まあ、ウチはお母さんが大黒柱だからねー」
ハハッと戯けて笑う声は、取り繕ってんじゃなく本心だと取れる。
「……お母さん、再婚……とかは?」
「ないない! お父さん一筋の人だし。十五年かぁ、なかなかすごいよねー」
こいつん家、母子家庭なのか?
俺の中でザワザワとしたものが立ち込めていく。
なるほど、なんか合点がいった。
あそこまで料理出来るのは、毎日作ってたからかよ。
フツーの家庭じゃねーから。
それを免罪符にしていたのによ、まいっちまうよ。
こんなマトモに育ってる奴とかいると。
「っかさぁー。内藤くんも心配してたよぉ? 未来ちゃん、いつも具合悪そうだって」
「えー、そんなことないよー」
「でも、夏休み前だって。あ、きたきた、こっちこっちー!」
俯いていた俺は気付かなかったが男子三人が横を通り過ぎていたようで、どうやらまた二人を引き合わせるように策略していたようだ。
またイガイガとしたものが立ち込めた俺は、勢いよく階段を駆け降りていき、いつもの旧校舎前から、空を見上げる。
こっからは屋上に続く階段は見えねーし、声も聞こえねーぞ。
ジャマしなくていーのか?
そんな考えからポケットに入れておいたスマホを出すが、力無くそっと戻す。
何が違うかだって? 全てが違うんだよ。



