「はーい! 買い出し係、立候補しまーす!」
「……はあ?」
その鈴を転がす可憐な音は、俺が吐き出すはずだった毒を綺麗に浄化してしまった。
「台車あるみてーだし、お前なんかいなくても、一人で充分なんだよ!」
「いくらなんでも、一人は無理でーす! 私もやります!」
「女なんていらねーよ!」
「私、力には自信があるのでぇ」
戯けた声に、俺の体内に溜まっていたはずの毒までもがどんどんと中和されていく。
「ねぇ未来、辞めておいたほうが……」
あいつと連んでいる女子共が、耳元でボソボソっと囁いている声が聞こえてくる。
ああ、辞めとけ。俺なんかと関わっても、ろくなことねーから。
「えー。だって、面白そうだし。私、買い出し係に変えようかなー?」
こいつの突拍子もない発言に教室内は「ええっー!」と湧き立ち、ザワザワザワと嫌な賑わいが起きていく。
「何言ってるんだぁ、お前はー!」
思わず俺は手を付いて立ち上がり、素っ頓狂な声を響かせちまった。
クラスの、かわいー奴(他の奴が勝手に言ってるだけだから、俺は知らん!)が調理補助すると、それだけで売り場が華やかになる。
それなのにこいつは自分の価値っていうものを全く理解してないようで、トンデモねー発言してるっていう無自覚っぷり。
おい誰か、軌道修正してくれ。
俺には、ムリだ。
「……お、俺も両方やります。だから未来ちゃんも、そうしようよ」
あまり自分から発言しない奴までが立ち上がり、口を挟んでくる。
内藤だ。
その声は震えており、どれほどの心意気で告げているのかが察せられた。
「えっ、手伝ってくれるの? わぁ、ありがとう! じゃあ、私も両方させてもらおうかなぁ?」
まるで語尾にハートマークでも付けたような話し方をするこいつは、華がフワフワと舞ってると錯覚をさせるような笑みを浮かべる。
……お前って奴は、本当に。
無自覚な人たらしほど、恐ろしいものはないな。全く。



