「ん?」
「い、いや! それよりお前帰れるのか?」
「うん。お母さんに迎えに来てくれているから」
「なら、良いけど」
話で誤魔化しつつ、こいつの顔を見るが、やはり顔色が悪く頬や唇の色までくすんでいる。
……日陰でそう見えるだけか?
「あ、時間かかるだろうから先に帰っていいよ。ごめんね」
「はあ? 別にお前の為とかじゃねーし」
「やっぱり優しいよ。藤城くん」
俺を見てクスクス笑うその姿に。
「知るか」
とそっぽ向く。
この時間が永遠と続けば。
風の音を聞きながら、ひたすら願った。
ピコン。
その音は、俺を現実に引き戻すには充分だった。
「あ、近くまで来てくれたみたい。ありがとう」
「ああ」
俺達は立ち上がり、先程の並木道に戻って行く。
こいつの足取りも戻っており問題無さそうで、車が止められる駐車場付近まで見守る。
「じゃあ、また明日ねぇー!」
あいつはゆっくりと歩いていき、俺も背向けて歩いてゆく。
やれやれと思いつつ、気付けば足を止めている自分が居た。
夏休み、クラスの奴らと会ったのか?
あいつと居る間、そんな野暮なことが喉元まで出かかっていた言葉。あの話の内容的に女子とは会っていても男子共とは連絡を取り合っただけじゃないかと、予想が立てられるのにも関わらず。
あいつと別れた途端にまた沸き立つ、腹の奥より押し寄せる苛つき。それを抑えようと、振り返っている自分がいた。すると、そこには。
まだこっちを見ていて、俺の視線に気付くと華のような笑顔で手を振ってくる、あいつ。
その姿に、俺はプイッと反応する。
なんだよあいつ。さっさと帰れよ!
腹にあった苛立ちは一瞬で消え去り、体から感じる暑さが熱さに変わっていく。その感覚を無視してズンズン歩いて行くと緑のトンネルを抜け、強い日差しに迎えられる。
いい加減にしろよ! 熱い、熱いんだよ。
額の汗を乱暴に拭いジリジリとする中を抜け家に着くと、俺は冷蔵庫の炭酸水に氷をぶちこみ一気に飲み干すが、その火照りは一刻に止まなかった。



