君と綴る未来 一余命僅かな彼女と一


「夏休み、執筆出来なかったの……」
 やっと呼吸を落ち着かせたこいつは、そう呟いた。

「だから、九月末の公募も間に合わないだろうし。私、何やってるんだろうね」
 靡く髪を片手で抑えたその姿は、あまりにも美しく、そして儚げで。

「そうゆう時は無理しなくて良いだろう?」
「え?」
「別にそれだけじゃねーし。それによ、無理して嫌になったら意味ないだろう? チャンスはこれだけじゃねーし」
 俺の言葉に、目をぱちくりさせたこいつは下がっていた口角をスッと上げてきた。

「ふふっ、藤城くんって優しいね?」
「はぁ? お前、この暑さでおかしくなったんじゃねーか? ……んで、次は!」
 むず痒い感情を抑える為、声を張り上げる。

「それ言ったら、『やる気あるのか?』とか『もう見るのやめる』って突き放されると思っていたの。だって、一ヶ月半も出来なかったんだよ?」
「バカかぁ? 無理に書いたものなんて、つまんねーんだよ。そんなの見せられる身になってみろ!」
「あ、そっか。ごめん」
 変わらず口の悪い俺に、こいつは素直過ぎる返答をしてくる。

「まぁ、分かればいーんだよ。……んで、次は?」
 だから、被せてそう呟く。
 こいつと相反して素直になれない俺は、優しく話したり気遣いは一切出来ない。
 だから、言葉でしか表せなかった。

 「次」の言葉に、また華を舞わせたこいつは、十一月末の文学賞に挑戦したいと口ずさんだ。
 規定は十万文字以上で残り三ヶ月。
 当然ながら学生の本分もあり、正直ギリギリだろう。
 そして見るからに体調が悪そうなこいつを、このまま挑戦させて良いのだろうか?

「大丈夫だよ。ちゃんと寝るから」
 俺の心を読んだかのように、微笑んで答えてくる。

「ああ。またぶっ倒れたら、もう読まねーからな」
「あー。うん、気を付けるよ」
 へへっと笑うこの姿は、悪いことがバレたいたずらっ子のような顔で、そんな顔をするのだと、まじまじと見つめてしまった。