駄菓子より甘い瀬野くん

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――春
 桜が咲き誇り、沢山の人が新たな生活に期待と不安で胸がはち切れそうになる温かで冷たいこの季節に、原田(はらだ)優輝(ゆうき)は憂鬱な気分を抑え込みながら新しく通学路となる道をとぼとぼと歩いていた。目の前を歩く両親の足取りは軽く、主役であるはずの自分が置いていかれている。
「優輝、何ゆっくり歩いてるんだ?」
「早くしないと入学式から遅刻しちゃうわよー!」
「……わかってるよ」
 渋々返事し、少し早歩きになって両親に追いつく。
 電車とバスを乗り継ぎ、二時間以上かけてようやく着いたのは、白壁を基調とした大きすぎる学校である。

 『私立風丘(かざおか)学園高校入学式』
 
 風丘学園は初等部から大学部まである名門一貫校であり、ここはその高等部にあたる。
 ほとんどの学生が内部進学している中、俺は外部生として今日からこの学校に入学することになった。

 入り口には白と金に彩られた豪華な立て看板が置いてあり、その前で笑顔で両親と写真を撮っている。
周りの生徒たちはみんな、他の生徒と楽しそうに話している。きっと内部生だろう。もう完全にコミュニティが完成されきっている。
 この人たちの輪の中にこれから入らないといけないと考えるだけで今から胃が痛くて仕方がない。はぁ……とため息をつきながらまだ名前も知らない先生の指示に従って講堂へ向かって行った。


***
 
 校長先生の嫌というほど長い話を終え、ようやく入学式が終わった。校長先生の話が長いのはどこの学校でも共通なのか? どうやったらあんな長々と話せるんだよ……なんて内心グチグチと文句を垂れつつ、引率する先生に着いて行き教室へ向かう。チラリと教室のプレートを見上げると『一組』と書かれていた。
――なるほど、一組か。別にどこでも一緒だけど。
 退屈で先生の話をほとんど聞いていなかった俺は、今ようやく自分のクラスを知ったのだった。