迷子の放送室で、君にだけ見つかりたい

掲示板前は、文化祭が終わったのにまだ忙しい。剥がし忘れたポスターの角が浮いていて、「撤収完了チェック」「忘れ物一覧」「反省会」の紙が重なって貼られている。俺は“当番表”の端を指でなぞり、今日の作業を頭の中で並べた。掲示物回収、備品返却、反省コメント用紙の回収箱設置。終わったはずの祭りが、まだ尾を引いている。

「結城、これ剥がす?」
相澤がいつもの半歩外側で聞く。俺は頷いて、ガムテの端を爪で浮かせた。

「剥がす。…でも、ここ粘着強い」
「貸して」

相澤が手を伸ばしかけて、途中で止めた。触る前の、いつもの確認の間。俺は小さく頷く。相澤が指先でガムテをゆっくり剥がし、紙を破らないように支える。丁寧すぎて、逆に笑いそうになる。

そこへ通りがかったクラスメイトが、掲示板を見て言った。
「うわ、反省会ってガチじゃん。委員会えら」
「相澤と結城、まだ仕事してんの? 真面目〜」

軽いノリ。悪意はない。俺は反射で否定しそうになって、やめた。否定すると、また“雑”になる。相澤が代わりに、薄いコメディで受け流す。

「うち、規約が厳しいんで」
「また規約〜」って笑い声が起きる。空気が噂にならずに流れていく。

人が去って、廊下が少し静かになった瞬間。掲示板の端に貼られた“当番の続き”の紙が目に入る。撤収当番、チェック、サイン欄。俺の名前の横に、相澤の名前が並んでいる。

「…続き、ちゃんと残ってるな」
俺が言うと、相澤が小さく頷いた。

「残した。終わったら終わり、にしないやつ」
言い方が真面目で、胸が少しだけ熱くなる。俺は紙を剥がして束ね、回収箱の位置を指さした。

「じゃ、これ回収して、備品返して、…最後にここサイン」
「了解。固定?」
相澤が冗談みたいに言うから、俺は小さく睨んでしまう。

「教室に持ち込むなって規約」
「今、廊下だからセーフ」
「規約ないって」

言い合いながら、俺はペンを取り出してサイン欄に名前を書いた。インクが紙に滲む音が、妙に落ち着く。隣に相澤のサインが並ぶ。たったそれだけで、当番の“続き”が、俺たちの“続き”にも見えてしまって、少しだけ怖い。けど、怖いままでもいい。終わったら話す約束は、まだ消えてない。