迷子の放送室で、君にだけ見つかりたい

夜。机の上はテープの切れ端とメモの山で、スマホの画面だけがやけに明るい。今日の「俺じゃなくていいだろ」が、まだ胸の真ん中に刺さってる。刺さってるのに、抜く言葉が見つからない。謝ればいいのに、謝ると“深い意味”を認めるみたいで怖い。怖くて、指が止まる。

それでも、打った。消して、また打って、最後に残ったのは作業みたいな文。

『明日、朝当番は行く。30分、普通に並ぶ。仕込みはその後行く』

送信。既読が付くまでの間が、やけに長いと思った。——でも、ほとんど同時に既読が点いて、すぐ返信が来た。

『了解。固定。6:55 昇降口の柱横。遅れても待つ』

即反応。短い。責めがない。そこが痛い。俺は続けて、別の文を打ちかけて止めた。ごめん、と打つと指が震える。代わりに、また逃げる文を選びそうになって、歯を食いしばる。

『今日、言い過ぎた』

送信。心臓が跳ねる。既読。秒で。

『知ってる。だから引いた。怒ってない。
でも刺さったのも事実。明日、朝当番のあとで3分だけ話す?(言葉なしでもOK)』

刺さった。事実。言葉なしでもOK。逃げ道を残して、逃げっぱなしにはさせない形。俺は画面を見つめたまま、息を吸った。浅いままでもいい。親指のルールを思い出して、スタンプを一つ送る。続行のつもりで。

すぐ、相澤から。

『👍 受け取った。
結城、行動で逃げそうになったら“横”でいい。消えるのだけ禁止』

禁止、が強いのに、優しい。俺は迷って、でも今は短く返した。

『消えない。明日、行く』

既読。即。

『よし。寝ろ。明日も半分で回す。』

最後の一行で、やっと肩の力が抜けた。謝罪も告白もできてないのに、固定が“戻れる場所”として残ってる。俺はスマホを伏せて、暗い天井を見た。怖さは消えない。でも、即反応がある限り、逃げても戻れる気がした。