『うん。待ってる。作業の話しなくていい。』
その返事だけで終わるはずだったのに、数秒あとに、もう一通届いた。既読をつける前に、分かる。相澤が“逃げ道”を用意しつつ、逃げっぱなしにはさせない時の文だ。
『結城。逃げんな』
文字にすると強いのに、圧がない。怒ってるわけじゃない。叱ってるわけでもない。確認みたいに刺さる。
続けて、短く。
『今日の「作業は明日で」もOK。
でも「結城が一人で抱える」は明日に持ち越し禁止』
俺の胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。バレてる。作業連絡を断ったのは、作業が嫌だったんじゃない。会話の入口になるのが怖かっただけだ。相澤はそこを外さない。
『22:30は固定。
話せないなら、スタンプ一個でいい。
親指でもいい。横でもいい。
“いない”だけはなし』
“いないだけはなし”。
それが一番ずるい。無理なら無理でいい、と言いながら、消えることだけは許さない。許さないのに、息が楽になるのが悔しい。
俺は「分かった」と打って、消して、「了解」と打って、消して、結局、変に正直な一文になった。
『……逃げた』
送信。既読が付く。秒で。
『知ってる。だから固定してる。
逃げたら戻ってこい。俺が待つ』
待つ、がまた刺さる。胸の奥のざわつきが、形を持ってしまう。逃げたいのに、戻りたい。戻りたいのに、怖い。
相澤は最後に、いつもの軽さを一行だけ混ぜた。
『で、今日の特別枠は“作業ゼロ”。
結城の呼吸だけ。』
俺はスマホを握りしめたまま、深く息を吸った。
逃げんな、が痛いのに——“戻ってこい”が、救いだった。
その返事だけで終わるはずだったのに、数秒あとに、もう一通届いた。既読をつける前に、分かる。相澤が“逃げ道”を用意しつつ、逃げっぱなしにはさせない時の文だ。
『結城。逃げんな』
文字にすると強いのに、圧がない。怒ってるわけじゃない。叱ってるわけでもない。確認みたいに刺さる。
続けて、短く。
『今日の「作業は明日で」もOK。
でも「結城が一人で抱える」は明日に持ち越し禁止』
俺の胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。バレてる。作業連絡を断ったのは、作業が嫌だったんじゃない。会話の入口になるのが怖かっただけだ。相澤はそこを外さない。
『22:30は固定。
話せないなら、スタンプ一個でいい。
親指でもいい。横でもいい。
“いない”だけはなし』
“いないだけはなし”。
それが一番ずるい。無理なら無理でいい、と言いながら、消えることだけは許さない。許さないのに、息が楽になるのが悔しい。
俺は「分かった」と打って、消して、「了解」と打って、消して、結局、変に正直な一文になった。
『……逃げた』
送信。既読が付く。秒で。
『知ってる。だから固定してる。
逃げたら戻ってこい。俺が待つ』
待つ、がまた刺さる。胸の奥のざわつきが、形を持ってしまう。逃げたいのに、戻りたい。戻りたいのに、怖い。
相澤は最後に、いつもの軽さを一行だけ混ぜた。
『で、今日の特別枠は“作業ゼロ”。
結城の呼吸だけ。』
俺はスマホを握りしめたまま、深く息を吸った。
逃げんな、が痛いのに——“戻ってこい”が、救いだった。
