布団に入ったのに、スマホだけが明るい。机の上のメモには「朝当番→回収→先生→修正→印刷」と書いてあって、見れば落ち着くはずなのに、心臓は落ち着かない。理由は分かってる。画面の上の通知が来るかどうか、それだけで呼吸が揺れるのが腹立つ。
(送るだけ。事務連絡)
俺はLINEを開いて打つ。
『明日の回収、放送部はOK。図書委員は昼までに来るって。あと暗幕、倉庫のやつ使えそう』
送信。
秒で既読。
『秒で送るなよ』って自分に言いかけたのに、相澤からもう返ってくる。速すぎる。
『助かる。結城、今から10分だけ“特別枠”取れる?』
特別枠。最近、相澤が勝手にそう呼ぶ。「ぐちゃぐちゃになりそうな時に、先に止まる時間」。昼の準備室から、いつの間にか言葉だけ残ってる。
『今?』
と打った瞬間、すぐ返ってきた。
『今。寝る前。結城が一人で抱える前に固定するやつ』
固定。逃げ道を塞ぐ言い方なのに、怖いより先に安心が来るのが悔しい。俺は指を止めて、ため息をついた。言わないと、また“置いていくな”になる。
『……分かった。10分』
送信。
秒で既読。秒で返事。
『よし。じゃあルール。毎日22:30、10分だけ。忙しい日は“無理”って送るだけでOK。理由いらない』
理由いらない、がずるい。俺が一番苦手な「説明」を免除してくる。胸の奥がきゅっとなるのに、画面の文字を指でなぞってしまう。
『特別枠って名前、やめろ』
強がりみたいに送ると、すぐ返る。
『やだ。結城専用で分かりやすいから』
結城専用。耳で聞いたら絶対むせる言葉を、平気で文字にするな。俺は布団の中でスマホを握りしめて、変な声が出そうになるのをこらえた。
『……了解。22:30固定』
送った瞬間、相澤が即レスしてきた。
『明日も。おやすみ、結城』
たったそれだけで、今日一日のざわつきが少しだけ静まった。
“明日も”が、また一つ増えた。怖いはずなのに、俺はスマホを枕元に置いたまま、少しだけ笑ってしまった。
(送るだけ。事務連絡)
俺はLINEを開いて打つ。
『明日の回収、放送部はOK。図書委員は昼までに来るって。あと暗幕、倉庫のやつ使えそう』
送信。
秒で既読。
『秒で送るなよ』って自分に言いかけたのに、相澤からもう返ってくる。速すぎる。
『助かる。結城、今から10分だけ“特別枠”取れる?』
特別枠。最近、相澤が勝手にそう呼ぶ。「ぐちゃぐちゃになりそうな時に、先に止まる時間」。昼の準備室から、いつの間にか言葉だけ残ってる。
『今?』
と打った瞬間、すぐ返ってきた。
『今。寝る前。結城が一人で抱える前に固定するやつ』
固定。逃げ道を塞ぐ言い方なのに、怖いより先に安心が来るのが悔しい。俺は指を止めて、ため息をついた。言わないと、また“置いていくな”になる。
『……分かった。10分』
送信。
秒で既読。秒で返事。
『よし。じゃあルール。毎日22:30、10分だけ。忙しい日は“無理”って送るだけでOK。理由いらない』
理由いらない、がずるい。俺が一番苦手な「説明」を免除してくる。胸の奥がきゅっとなるのに、画面の文字を指でなぞってしまう。
『特別枠って名前、やめろ』
強がりみたいに送ると、すぐ返る。
『やだ。結城専用で分かりやすいから』
結城専用。耳で聞いたら絶対むせる言葉を、平気で文字にするな。俺は布団の中でスマホを握りしめて、変な声が出そうになるのをこらえた。
『……了解。22:30固定』
送った瞬間、相澤が即レスしてきた。
『明日も。おやすみ、結城』
たったそれだけで、今日一日のざわつきが少しだけ静まった。
“明日も”が、また一つ増えた。怖いはずなのに、俺はスマホを枕元に置いたまま、少しだけ笑ってしまった。
