廊下に出た瞬間、教室の熱が嘘みたいに引いて現実が戻った。視聴覚室の空気はこもっていたのに、外は冷たくて、蛍光灯の白さがやけに刺さる。俺は資料の束を抱え直し、掲示板の前で足を止めた。文化祭の提出締切一覧が、紙の端から端までびっしり貼られている。
「……うわ、地獄」
背後から相澤の声。さっきまでの軽さはそのままなのに、覗き込む目だけは真剣だった。
「地獄でも、やる。締切は待ってくれない」
俺は持ってきたメモを広げ、ペンで日付に丸を付ける。パンフの原稿、掲示物の文言、各団体の掲載内容、確認印、先生のチェック。書けば書くほど、目の前が狭くなる。
「結城、これ全部一人で回す気?」
相澤が、丸を付けた日付を指で追う。指が近い。紙の上に影が落ちて、俺の手元まで覗かれている感じがして落ち着かない。
「回す気っていうか……必要だから」
「必要だから、って言うやつほど潰れるんだよな」
「別に潰れない」
言い返した瞬間、自分でも嘘だと分かった。潰れないように頑張る、が正しい。頑張り方が下手なのも、分かっている。
俺は息を整えて、項目を読み上げた。
「まず各団体。クラス出し物、部活、委員会。掲載内容を回収して、誤字脱字チェック。遅れると、印刷に間に合わない。掲示は当日の朝までに貼り出し完了。――だから、回収の催促が必要」
「催促係、ね」
相澤が口の端を上げる。嫌そうなのに、逃げない顔をしているのが腹立たしい。
「嫌なら俺が――」
「嫌って言ってない。めんどいって言ってるだけ」
言い方が軽い。けど、その軽さが、今日だけは少し助かる気もした。俺の頭の中の「全部」を、外に出して並べられるから。
「じゃあ、分ける」
俺はペン先で、団体名を二つに割る線を引いた。真ん中に一本。たったそれだけで、胸の圧が少しだけ下がる。
「運動部、文化部、委員会……どこから行く?」
俺が聞くと、相澤は一瞬も迷わず、俺の締切表を覗き込みながら「じゃ、運動部は俺」と即答した。
「……うわ、地獄」
背後から相澤の声。さっきまでの軽さはそのままなのに、覗き込む目だけは真剣だった。
「地獄でも、やる。締切は待ってくれない」
俺は持ってきたメモを広げ、ペンで日付に丸を付ける。パンフの原稿、掲示物の文言、各団体の掲載内容、確認印、先生のチェック。書けば書くほど、目の前が狭くなる。
「結城、これ全部一人で回す気?」
相澤が、丸を付けた日付を指で追う。指が近い。紙の上に影が落ちて、俺の手元まで覗かれている感じがして落ち着かない。
「回す気っていうか……必要だから」
「必要だから、って言うやつほど潰れるんだよな」
「別に潰れない」
言い返した瞬間、自分でも嘘だと分かった。潰れないように頑張る、が正しい。頑張り方が下手なのも、分かっている。
俺は息を整えて、項目を読み上げた。
「まず各団体。クラス出し物、部活、委員会。掲載内容を回収して、誤字脱字チェック。遅れると、印刷に間に合わない。掲示は当日の朝までに貼り出し完了。――だから、回収の催促が必要」
「催促係、ね」
相澤が口の端を上げる。嫌そうなのに、逃げない顔をしているのが腹立たしい。
「嫌なら俺が――」
「嫌って言ってない。めんどいって言ってるだけ」
言い方が軽い。けど、その軽さが、今日だけは少し助かる気もした。俺の頭の中の「全部」を、外に出して並べられるから。
「じゃあ、分ける」
俺はペン先で、団体名を二つに割る線を引いた。真ん中に一本。たったそれだけで、胸の圧が少しだけ下がる。
「運動部、文化部、委員会……どこから行く?」
俺が聞くと、相澤は一瞬も迷わず、俺の締切表を覗き込みながら「じゃ、運動部は俺」と即答した。
