【配送伝票 No.6】荷主:イケメンだといいな お届け先:イケメンだといいな 品名:LINE句会で、初顔合わせ


 ルカから、LINEグループ『トラガールの内緒話』にメッセージが入った。
『ねえ、確か今日は五人とも夜は仕事なかったはず。帰宅したらグループ通話してみない?』

『いいね』
『やろう。夕飯食いながら』
『顔も見れるしね』
『承知いたしました』

『それでさ、ちょっとした遊びでね。思ってること、俳句とか短歌とかにしてみない?』
『えー、難しそう』
『やってみっか』
『季語があるのは短歌の方だっけ?』
『考えます』

『じゃあ、宿題ね。夜八時に招待するから』

で、夜八時。トラガール達が次々とグループ通話に入ってくる。

『おー、普段声だけだから、これは新鮮』
『えーっと、リョウとロマンは、わたしと顔見知りだけど、レイとラナは、二人は初めてね』
『ラナです。この間、大雪が降ったとき、ロマンさんが駆けつけてくれてお会いしました。あの時はありがとうございました』
『チェーン着けぐらいちゃんと覚えろよー!』
 リョウからヤジが飛ぶ。
『まあまあ、それは置いといて、先に進めるよ』

『はいはい、じゃあ、ルカ、進行役お願い』
『キャラ的にはやっぱルカが司会向いてるよねー』

『わかったわかった……では、さっそく自己紹介から行きましょう。順番はそうね、らりるれろ順』
『え、ボクたちてひょっとして……』
『そう、何か作為を感じるけどね』

『じゃあ、「ら」のラナさん』
『はい、ラナです。主にコンビニのルート配送やってます。実家は花屋なので配達を手伝わされて軽トラ乗ってました。ルカのご両親のお店に五周年のお花を届けに行ったのが縁で、ルカと知り合い、このグループに入らせてもらいました。よろしくお願いします』

『よろしく。じゃあ、さっそく一句お願いしまーす』
『では、オホン』

“コンビニの 納品相手が 超イケメン

 思わずマスクで スッピン隠す "


『そうそう、そういう感じ』
『これは後になるほどやりにくいなあ』


『はい、ではお次、「り」のリョウ』
『ああ、オレはリョウ。ロマンと会社が同じ。長距離専門。配送先は、大阪、福岡が多いかな』

 その時、リョウの画面に何かが映りこむ。
『ねえ、ママなにやってんのー?』
『なんか、へんな人がいっぱいいるよ』
 女の子がスマホのカメラを覗いたり、リョウの後ろを行ったり来たりしている。
『おいおいミム、あっちでおとなしく遊んでいてくれよ』
『かわいい! この子が、リョウの愛娘、ミムちゃんね』
 一瞬リョウママと娘が画面から消えた。大きなわめき声が聞こえ、リョウだけが戻ってきた。

『おまたせ。では、一句』

“手伝うと スケベ心で 寄る男

 足手まといで ありがた迷惑"


『リョウの毒吐き、きましたねー!』
『でも、わかるわかる』

『じゃあ次の方、「る」のルカ、あ、わたしか!』
『ナイス、ボケ!』
『はい、ルカです。レイと同じ会社、最初は事務やってたんだけど、トラックの運転面白そうなので、2トンで地場の配送もやってます。家のスナックを手伝ってるから、事務とドライバーとチーママの三刀流かな?』

『こいつ、メガネとるとすごいらしいぜ』
『えー、取って見せて!』
『お断り。見たかったら、“スナック涙花”に遊びに来てね。では、一句』


“スナックで 対人ストレス ぼやく客

 トラック転職 勧めてみたい"


『そーだねー、トラックの運転始めたら、確かに人間関係のウザさは、だいぶ無くなったよねー』
『はい、では「れ」のレイ。どうぞー』

『ボクはレイ。中型中距離だけど、会社が人使い荒いから、長距離とか小型で地場とか、何でもやらされてるよ。そのくせ社長、運行管理厳しくてさー。あ、趣味で、小説読んだり書いたりしている』
『おー、見た目と違って文学少女!』

『でも短歌とか俳句とかいまいち苦手だなー、では一句』

“「デジタコが

 付いてるからな」と

 耳にタコ"


『面白いけど、これ俳句でしょ。季語は?』
『季語はタコ』
『それって季節はいつだよ?』

『そんなら、こういうのは、どうだ?』
 リョウが手を挙げる。

“デジタコだあ?

 おまえ(社長)のアタマは

 ゆでダコだあ!"

『きたきた!』
『本領発揮ね』

『ハイハイ、ではトリ。「ろ」のロマン』
『はい。ロマンです。長距離専門で、北関東から東北、時々北海道まで行ってる。ホントは寒いの苦手なんだけど』

『では、一句、バシッと決めてもらいましょう!』


“脳内で 演歌流れる みちのくを

 走って北に 愛を届ける"


『やっと最後に色っぽいのが出たね!』
『そういえば、ロマン、何か札幌でいいこと合ったそうじゃないか?」

 ロマンの一句がきっかけで、結局この後は、恋バナ大会が延々と続くのであった。