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淡い陽のコンチェルト
〈この調べと ともに〉
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
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「モーツァルトのクラリネット協奏曲の二楽章、秋の陽ざしなんだって」
ブラバン部で一緒に活動している、僕のガールフレンド(多分。)が、楽器ケースを両手でぶら下げ、公園の落ち葉をカサカサ踏みながら言った。
「何だいそれ? 」
「おととい、ドイツのクラリネットの名手のコンサートがあったでしょ。楽屋にお花をもっていったら、教えてくれたんだ」
彼女は、手のひらを陽にかざして透かしながら、つぶやく。
「やさしくて、ちょっぴり寂しい明るさ。……それ聞いて、モーツァルトも、秋も、ますます好きになっちゃった」
その姿を見て、僕は彼女をますます好きになった。
高い空の上から、そんな二人の会話を聞いていた秋。
「うれしいね……でも」
もうすぐ冬に交代の時期だ。彼女とも、しばらくお別れだ。
「忘れないでね」
秋は、そっと少女を抱きしめ、またね、と言った。



