「夜の中にも光が見えてきたようでよかったわ。でも、まだ癒しが足りないようね」
「え? もう十分すぎるほどよくしていただきましたけど……」
すると、アステールがさっと右から手鏡を渡してくれる。自分の姿を見てみろということだろうか。
「まず、涙を流したことで、少しまぶたが赤く腫れてしまっているわ。たまに涙を流すことは心にとって大切だけれど、そのあとのケアも忘れないこと。それから、あなた目の下のくまがひどいわよ。最近寝不足なのかしら?」
「そうですね、やることがたくさんあって……」
「忙しいときもあるでしょうけれど、睡眠不足は万病のもとよ。少しでも時間があるときは目を閉じて休むようにしなさい。顔色もいいとは言えないわね。ちょっと失礼するわよ」
ノクティアはまた前足をくるりと回した。すると、なんだか一気に疲れが吹っ飛んで、肩が軽くなり、頭がすっきりした。鏡をもう一度見てみなさい、と言われて、手鏡を覗きこむと、まぶたの腫れも目の下のくまもきれいさっぱりなくなっていた。心なしか、顔色もましになっている気がする。
「疲れを癒し、外見をもとの姿に戻す魔法をかけたわ。あとは今夜熟睡できるおまじないも。でも、この効果はずっと続くわけではないのだから、生活習慣には気をつけることね」
「ありがとうございます!」
何から何までとても手厚い。ノクティアの優しさに感謝があふれてくる。
「あら、サービスはまだまだ、これからよ。ここからが本当の癒しの時間」
ノクティアがふふっと上品に微笑んだ瞬間、どこからともなくわらわらとたくさんの猫ちゃんたちがやってきた。
「わあ!」
いろいろな毛並みの猫たちは、テーブルにのぼったり私の足からひざまでのぼってきたりして、みんな私のもとに集まってきてくれる。もふもふパーティーだ。
いくらでも触っていいわよ、とノクティアに言われ、ひざの上の猫ちゃんをなでる。ふさふさの毛は触れるととても気持ちよく、優しくなでるとゴロゴロ喉を鳴らすのがとってもかわいらしい。
肩に乗っかった猫ちゃんが私の頬にからだを擦り寄せてくる。くすぐったいけれど、それ以上にかわいい。天国にいるみたいだ。頭の中がかわいいで埋め尽くされる。心が最高の幸福感で満たされる。
「はああ、ずっとここにいたい……」思わずつぶやくと、ノクティアが困ったように笑った。
「だめよ、人間は現実を生きる生き物だもの。こういうところはたまに来るからいいの。それに、あなたはもう見据えるべき未来はわかったでしょう? この先、あたたかく光る未来があなたを待っているわ。でも——また疲れたら、いつでもいらっしゃい」
ノクティアの声に、目の前の猫ちゃんたちや部屋の景色がぐにゃりと歪む。だめ、まだちゃんとお礼を言っていないのに。そう思っても、急激な眠気に耐えられず、私はもふもふたちの中、また意識を手放した。
「え? もう十分すぎるほどよくしていただきましたけど……」
すると、アステールがさっと右から手鏡を渡してくれる。自分の姿を見てみろということだろうか。
「まず、涙を流したことで、少しまぶたが赤く腫れてしまっているわ。たまに涙を流すことは心にとって大切だけれど、そのあとのケアも忘れないこと。それから、あなた目の下のくまがひどいわよ。最近寝不足なのかしら?」
「そうですね、やることがたくさんあって……」
「忙しいときもあるでしょうけれど、睡眠不足は万病のもとよ。少しでも時間があるときは目を閉じて休むようにしなさい。顔色もいいとは言えないわね。ちょっと失礼するわよ」
ノクティアはまた前足をくるりと回した。すると、なんだか一気に疲れが吹っ飛んで、肩が軽くなり、頭がすっきりした。鏡をもう一度見てみなさい、と言われて、手鏡を覗きこむと、まぶたの腫れも目の下のくまもきれいさっぱりなくなっていた。心なしか、顔色もましになっている気がする。
「疲れを癒し、外見をもとの姿に戻す魔法をかけたわ。あとは今夜熟睡できるおまじないも。でも、この効果はずっと続くわけではないのだから、生活習慣には気をつけることね」
「ありがとうございます!」
何から何までとても手厚い。ノクティアの優しさに感謝があふれてくる。
「あら、サービスはまだまだ、これからよ。ここからが本当の癒しの時間」
ノクティアがふふっと上品に微笑んだ瞬間、どこからともなくわらわらとたくさんの猫ちゃんたちがやってきた。
「わあ!」
いろいろな毛並みの猫たちは、テーブルにのぼったり私の足からひざまでのぼってきたりして、みんな私のもとに集まってきてくれる。もふもふパーティーだ。
いくらでも触っていいわよ、とノクティアに言われ、ひざの上の猫ちゃんをなでる。ふさふさの毛は触れるととても気持ちよく、優しくなでるとゴロゴロ喉を鳴らすのがとってもかわいらしい。
肩に乗っかった猫ちゃんが私の頬にからだを擦り寄せてくる。くすぐったいけれど、それ以上にかわいい。天国にいるみたいだ。頭の中がかわいいで埋め尽くされる。心が最高の幸福感で満たされる。
「はああ、ずっとここにいたい……」思わずつぶやくと、ノクティアが困ったように笑った。
「だめよ、人間は現実を生きる生き物だもの。こういうところはたまに来るからいいの。それに、あなたはもう見据えるべき未来はわかったでしょう? この先、あたたかく光る未来があなたを待っているわ。でも——また疲れたら、いつでもいらっしゃい」
ノクティアの声に、目の前の猫ちゃんたちや部屋の景色がぐにゃりと歪む。だめ、まだちゃんとお礼を言っていないのに。そう思っても、急激な眠気に耐えられず、私はもふもふたちの中、また意識を手放した。



